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▼ 風間さんの誕生日

9月24日、風間さんの誕生日を祝う為に、美味しいカレー屋さんをリサーチして、気になるお店を発見した。何店舗かあるお店を友達やみょうじに付き合ってもらって、1番気に入ったお店に行くことにした。ちゃんとカツカレーもあったし、きっと満足してもらえるだろう。風間さんに連絡して予定を確認すると、当日は風間隊でお祝いして夜からは諏訪さん家コースだろうという私の予想通りの展開だったので、風間さんが予定のない前日に、駅前でお昼に待ち合わせをさせてもらった。私は夜の防衛任務にあたっていたけど何とかなるだろう。任務が終わったらそのまま本部でシャワーを浴びて、仮眠室で仮眠を取って、隊室で準備すれば一度帰るよりも確実に早い。ヘアセットに悩んで、さぁちゃんに連絡したら、私に任せなさい!と言ってくれたので、お言葉に甘えてお願いすることにした。風間さんにはお腹空かせてきてくださいね!とだけ告げて行き先は伝えず濁すことにして、ではまた!と返信した。わかった、との返事に更に気合いを入れて準備しなければ!と使命感に駆られたのだった。当日まで用意しないといけないプレゼントは正直めちゃくちゃ悩んだ。付き合っていない成人男性への誕生日プレゼントって一体何がいいのか、悩みまくって最終的にみょうじに相談した。いつものことだからか、呆れた表情でため息を付きつつ沢山アイデアを出してもらい、手帳とちょっといいボールペンに漸く決めることが出来たのだった。そして後はカレーを食べに行く、という名目でのお出掛けをうるさいメンバーに気付かれないようにすればいいだけである。 とにかく当日まで着ていく服を選んだり、化粧品を新調したりすれば時間はあっという間に過ぎていった。そして夜の防衛任務が終われば風間さんとお出掛け!というタイミングで運悪く、太刀川とペアになっていた。これはなんとしてでも明日の計画がバレないようにしなければ。バレれば面白がってメンバーを集めて着いてくる気がしてならない。私には副作用はないけれどそれ位なら行動は行動パターンが読める。気を張りながら防衛任務にあたっていると、ダルそうにしていた太刀川が口を開いた。

「なぁ明日、風間さんの誕生日だろ。ミョウジも夜、諏訪さん家来るのかよ?」

「いや、私はいかない。男の人同士で楽しんで〜」

その前に私には大事な予定があるからな!そう言いたいのをぐっと堪える。だいたい諏訪さん家に行くメンバーが男の人ばっかりだし、人数もだいぶ多い。そこに女性が自分一人なことは流石に気が引けるし、何も知らない同じ大学の人がコンビニとかでその光景を見たらどう思うだろう。あることないこと言われるのは避けたい。なんだよノリわりぃなぁ、とぼやく太刀川を無視して早く交代の時間になってくれと祈ったのだった。



ものすごく長く感じた防衛任務をやっとのことで終えて、お疲れ、と軽く挨拶をして太刀川と別れた。そこからはほぼ競歩のスピードで隊室に戻りシャワーを浴びて、さぁちゃんとの待ち合わせまで予定通りに仮眠室に行ったけど、全く眠れない。遠足前の小学生かよ、というツッコミを心の中でしつつ結局横になっても眠れないまま、アラームを設定した時間になってしまった。寝れなかったのはちょっと残念だけど、眠気は全く来ない。スキップする勢いで隊室に戻り、さぁちゃんが来るまで先にメイクを始めた。

「おっはよー!早いねぇ」

「いや仮眠室行ったんだけど結局寝れなくてさ」

「うん、すっごいナマエちゃんらしいね〜」

そうかな?と言いつつ、手を止めないで準備している私の後ろにさぁちゃんが回って、慣れた手つきで私の髪に触った。

「ナマエちゃんはさ、いつも似たような髪型だからたまには凝ってるのもいいよねぇ」

「…確かに」

さぁちゃんの言うとおり、基本的には下ろしているか、ひとつにまとめる位しかしていない。そんなに得意ではないこともあり、本当に気が向いた時にしか、手の込んだヘアアレンジなんてしていなかった。それに比べてさぁちゃんは器用で、よく凝った髪型をしている。そんなことを思っている間にも、コテで髪を巻かれて綺麗なハーフアップが出来上がっていく。ちょうど私のメイクが終わるタイミングではい、おしまい!と声が響いた。

「…さすがだねぇ、すごい!!」

「どういたしまして〜!我ながらかわいく出来たよ〜」

嬉しい!ありがとう!とお礼を言って、そろそろ時間が近づいて来たので待ち合わせ場所に向かう。余裕を持って準備したからか、15分前には着いてしまったけど、待つのは全然苦じゃない。むしろデートみたいでちょっとドキドキした。そんなことを考えていると、聞き慣れた声が聞こえた。

「悪いミョウジ、待たせたか?」

「いえ!今きたところです!」

漫画とかでよく聞く台詞だなぁなんて思っていたけど実際にこういう展開になると、ありきたりなこの言葉しか出て来なかった。

「さぁ行きましょうか!お腹空いてますか?」

「あぁ、腹を空かせてこいと言われたからな」

「ふっふっふ、期待してくださいね!」

話ながら並んで歩く。目的のカレー屋さんは駅からそう遠くなく、10分位でお店に着いた。ここですよ、という私に初めて来たな、という風間さん。そうでしょうそうでしょう。来たことないところを狙って、三門市からは少し離れたお店にしたのだから。お店に入ると、店員さんの元気な挨拶が聞こえる。二人で、と告げると席に案内されて、メニューを出してくれた。店員さんが離れると早速メニューを決める。お互いにすんなりメニューも決まり、後は出てくるのを待つだけだ。因みに風間さんはカツカレー、私はスタンダードなカレーを注文した。それからは講義の話をしたり、最近のランク戦の話をしたりした。大体は私が話して風間さんは聞き役なんだけど。話もちょうど一段落したところで、お待ちかねのカレーがやって来た。前回食べにきた時同様、いい香りが広がった。後は風間さんが食べるのを固唾を飲んで見守る。私が食べた中では一番美味しかったけれど、果たして口に合うだろうか。そんな私の心配を他所に、一口二口と食べ進め、うまいな、と呟いた。よかった…!と安心している私に、食べないのか、冷めるぞ?なんて言いながらも、風間さんのカレーはどんどんなくなっていく。私もいただきます!と手を合わせて食べ始めると、スパイスの効いた味が口いっぱいに広がった。やっぱりここにしてよかったなぁ。それからは、予想通り私より早く食べ終わった風間さんを気にして急ごうとする私に、ゆっくりでいいと言ってくれたので、お言葉に甘えて落ち着いて食べることが出来た。そのままお会計をして帰路に着く。勿論私が二人分お会計をした。渋っていた風間さんだったけど、明日誕生日ですよね!という私の強気な態度に諦めて、大人しく奢られてくれた。

「ミョウジ、うまかった。ありがとう」

「どういたしまして!お口に合ってよかったです!」

「あぁ気に入った。また来ようと思う」

なんと、また来てくれる位気に入ってくれたなら本望である。最後に1日早いですけど…、と用意していたプレゼントも渡す。ありがとう、とちょっと笑ってくれたような風間さんに、私も大満足の1日になったのだった。



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