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▼ アニカフェ書き下ろし絵のやつ

買い物がてらふらふら〜っと街を歩いていると、青いつなぎを着たとりまるに遭遇した。手にはなにやらペンキのような缶を持っている。何やってんの、とつい聞いてしまったのは仕方ないだろう。普通日常生活でつなぎを身に着けることなんてほとんどない。また新しいバイトでも増やしたのだろうか。

「レイジさんが玉狛でDIYを始めるのでペンキ塗りの手伝いです」

「えっ。レイジさんついにTOKIOになるの?」

「さすがに無人島開拓まではしてないですけど」

「準レギュラーくらいにはなれそうなスキル持ってるよさすがレイジさん」

オーディションとかやってないだろうか。ほら、ひとりメンバー抜けたし。料理ができてDIYができてパーフェクトオールラウンダーでゴリラ。レイジさんならちょっとやらせれば楽器だってすぐ弾けるようになるだろう。不謹慎ですよ。とりまるの注意されたので、うるさい不謹慎厨め!と言ったら何言ってんだこの人、という冷たい目で見られるだけだった。心が痛い。

「流行りに乗るタイプってわたし好きじゃないんだけどレイジさんとDIYは相性良すぎるよね。なんというマリアージュ」

「流行りに乗るのが嫌いっていうのは初めて聞きました」

「やっぱり自分を強く持ってることって大事じゃん?なに?タピるって。たかがタピオカになんでそんな並ぶの?そんなに飲みたいの?昔からあったじゃん」

「なまえ先輩はタピオカに親でも殺されたんですか」

一応言っておくが、わたしはタピオカは普通に好きである。文句があるのはタピオカに対してではなく流行に流されやすい世間の人々に対してだ。そもそもタピオカってカロリーめちゃめちゃ高いんだからな!ぷんすこと文句を垂れながらとりまると並んで歩いていると、玉狛支部への道に誘導されていることに気がつく。そこで立ち止まってUターンしようとするが、察したとりまるに退路を塞がれてしまった。

「わたし帰る」

「暇なら手伝ってくれてもいいじゃないですか」

「全然暇じゃない」

「嵐山さんもいますよ」

「しょうがないなあ!少しだけだよ!」

華麗な手のひら返しである。だってとりまるがつなぎってことは嵐山さんもでしょ。しかも玉狛ってことは小南もいるし、嵐山さんと仲が良い迅さんもいる。ちょっとやんちゃな嵐山さんが見れたりとかしないだろうか。できればとりまると嵐山さんを並べて写真を撮りたい。待ち受けにする。そうして連れてこられた玉狛支部は、想像よりも多くの人で賑わっていた。まず、いつもかわいい玉狛第二のみんながつなぎで和気あいあいとペンキを塗っていた。えっ。かわいいの暴力なんだけど。ヒュースまでつなぎを着て手伝っている。え〜〜〜かわいい〜〜〜〜〜。思わずスマホを取り出して連写した。

「何をやっている…」

シャッター音に気付いたのか、不快そうに顔を顰めたヒュースがずかずかと歩いてきてわたしのスマホを奪おうとするが、わたしのスマホには大切なデータが山ほど入っている。みすみす奪われたりしない。急いでスマホを鞄に突っ込んだ。

「お手伝いするなんてえらいねえ、ヒュース」

「おいトリマル、なんでこの女を連れてきた」

「暇そうだったんだ」

「頭からペンキぶっかけるぞ、太刀川さんに」

わたしは買い物をしていたのだ。決して暇だったわけではない。失礼極まりないやつらに、なぜかつなぎを着てだらだらとペンキを塗っている太刀川さんを指差してそう言うと、おれかよ、とやる気のないツッコミが入る。だってイケメンをペンキまみれにするわけにはいかないじゃないか。ていうか太刀川さんは一生懸命頑張っている玉狛第二のみんなを見習ってほしい。なんでペンキ缶に座ってサボっているのか。そしてなんでそんなに汚れているのか。

「もしかしていじめられてるんですか?」

「なんでだよ。カラフルでかっこいいだろ」

「あっはいそうですねすごくかっこいいですさすがたちかわさん」

かっこいいと思っていたのか。そっと目を逸らして離れようとすると、サボるな、太刀川さんを後ろから蹴り飛ばす小さな影。いやいやいや。

「風間さんまで何やってるんですか……」

「今日はカツカレーだそうだ」

カツカレーに釣られたらしい。なんて安い男だ。太刀川さんを引きずって作業に戻る風間さんを見送るが、この人数が集まってDIYってどんな規模だよ。レイジさんは店でも作ろうとしているの。嵐山さんが迅さんと仲良くペンキを塗っているのを眺めて、ほぅ、と嘆息する。今日も顔が良い。顔についたペンキすらいいアクセントにしてしまう嵐山准。当然のように写真を撮った。

「あんた何やってんの。早く着替えてきなさいよ」

「わたしつなぎないからここで見てる」

「あたしの貸してあげるからさっさと着替えてきてあんたも働きなさい!」

黄緑色のつなぎを身にまとい、髪の毛をポニーテールにした小南に背中を押されて支部の中に入る。みんな本気すぎない?そもそも何を作っているの?小南に渡されたのは小南とおそろいのド派手な黄緑色のつなぎで、わたしもこれを着るのかぁ、とちょっと遠い目をしてしまう。しかし小南に急かされてしまえば断るすべもなく、着替えながら今何を作っているのかを小南に聞くと、そんなことも知らないの?と言われてしまった。そんなこと言われても、誰も教えてくれなかったじゃないか!俺は悪くねえ!と、内心はレプリカルークの気分である。それでもちゃんと教えてくれるのが小南のいいところだ。どうやらレイジさんは玉狛支部に陽太郎の遊び場を作ろうとしているらしく、ブランコをはじめとした遊具を作っているらしい。思ってたより100倍大がかりだった。

「せっかく施設があるんだからトリオンで作ればいいじゃん…」

「馬鹿ねあんた。それじゃあたたかみがないじゃない」

「あたたかみ」

それはオーガニック志向とかそういうやつなのでは。しかし陽太郎のために、とみんなが頑張っているところに水を差すのはさすがにしのびない。レイジさんがどこを目指しているかは知らないが、まあペンキ塗りくらいならわたしにもできるだろう。着替え終わって外に出ると、すべり台のように見える遊具、おそらくブランコであろう遊具、すべて真っ二つになっていた。状況を理解できず周りを見渡すと、レイジさんと風間さんにめちゃめちゃ怒られている太刀川さんの姿。

「ちょっと修、何があったのよ」

「それが…すぐ近くにバムスターがあらわれて…」

「ペンキ塗るのに飽きちゃったタチカワさんが迅さんが止めるのを聞かずに旋空で作ってたやつ巻き込んでまっぷたつ」

三雲くんと遊真が説明してくれると、小南があいつ馬鹿ね、と吐き捨てた。激しく同意である。あの嵐山さんですら苦笑して壊れた遊具をの破片を片づけていた。着替えただけ無駄だったなぁ、と思ったが、太刀川さんのせいで機嫌の悪いレイジさんにこき使われ、壊れた遊具の片づけを手伝わされることになったのでつなぎを借りて本当によかったと思う。片付けまで終わった後に食べた小南とレイジさんの合作のカツカレーはとても美味しかったが、目の前に水だけ置かれた太刀川さんの怨みがましい視線を受け、非常に居心地が悪かった。そんな中でもすっかりいつもの爽やかな笑顔を見せる嵐山さんはやっぱり顔がいいので、暇な休日が予想外に充実したものになったなあ、としみじみ実感する。いや、暇じゃないんだけどな!


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