▼ 21歳組と飲みに行く
なんとなく最近調子が出ない気がして、気分転換に防衛任務終わりに20歳組で飲みに行こうとみんなに声をかけてみたけど、こういう時に限ってなかなか予定が合う人が捕まらない。加古ちゃんと堤と来馬が駄目なら私の精神状態的に他の二人とは飲みにいけない気がする。そうなると一つ上のなんだかんだお兄ちゃんみたいな諏訪さんがいいかなと思い、声をかけてみると21歳組の飲み会だということで今日はその飲み会に混ぜてもらうことにした。
「なんで私はあんなキメ顔ばっかのイコさんに勝てないんでしょうか…!!」
どんっとビールの入ったジョッキをテーブルに叩きつける私をみて
「おいおい飲み過ぎだろ」
と呆れる諏訪さんに店員さんに水を頼んでくれるレイジさん。
風間さんは相変わらず読めない表情で枝豆を頬張っている。
「はっ!もしやキメ顔すれば強くなれるとか…?」
「な訳ねーだろうが!!馬鹿か!」
「残念、それなら勝てなくても仕方ないと思ったのに…それよりもやっぱり旋空弧月が厄介ですよね〜」
「確かに生駒の旋空は厄介だな」
「ですよね〜。私じゃイコさんの旋空には太刀打ち出来ないし…やっぱグラスホッパー上手く使ってスピード勝負するか…」
年に数回、こういう時期がきてううん悩む…と頭を抱える私にアドバイスをくれて、その度に飲みに付き合ってくれるなんだかんだ優しい先輩たちだ。生憎私の所属する隊は未成年ばかりで飲みにいけないのが残念である。四人でだいぶ飲んで、いい感じにふわふわしてきたところでみょうじがこないだ言っていた彼ジャーなるものを思い出した。
「そういやみょうじが学校でジャージ忘れて出水にジャージ借りたらしいんですよ。ちょっとやってみたいんで上着貸してもらえません?」
急に何を言い出すのかといった顔で私を見る三人だったが、仕方なしに上着を差し出してくれた。みんなほんとに優しい。いつもの隊での扱いとかに馴れている私はちょっとなきそうである。
「では失礼して…」
最初はレイジさんの。
「おぉ!!やっぱりやばいですね!!」
「おまえ子どもみたいじゃねぇか!!」
ぎゃはは!!と諏訪さんの笑い声が響く。
レイジさんは顔を隠して肩を震わせてるし、絶対にこれ笑ってる。風間さんは相変わらず読めない表情だ。むしろ笑ってくれた方がいい。私の格好はというと、そでが長すぎてキョンシーの様になり、裾は裾で膝辺りまできていて本当にお父さんの上着を着た子どもみたいになっている。ありがとうございますと上着をレイジさんに返した。
「じゃあ次は諏訪さんの」
うん、思った通りだ。
「諏訪さん、煙草臭いっす」
「おまえふざけんなよ!!」
サイズ的には結構理想だろうか。出水のジャージを着たみょうじもきっとこんな感じだったのだろうと想像がつく。こちらもありがとうございますと上着を返して、次はいざ風間さんの。ほら、と差し出された上着を受けとるが、もしやこれ入らないとかいうやつでは?という嫌な予感がはしる。
「えっと、これ私、入りますかね?」
ぶふぉっ!!という笑い声がまた響く。
いや私は間違ったことは言っていない筈だ。かなり不安である。
「入らない訳ないだろう、着ろ」
「はい…」
結構な量のお酒を飲んでいたのだろう。目が据わっているこわい。
「失礼します」
おそるおそる上着に袖を通すと意外なことに余裕で入った。しかもちゃんと着てみると、思ったより袖も長くて肩が少しずり下がる。結構酔っていた自覚があったが顔がどんどん熱くなってきて酔いも覚めてくる。
「だから言っただろう。入らない訳ないと」
「ありがとうございました。すみません、ちょっとお手洗いに…」
そう言って、私はその場から逃げ出した。ちくしょう狡くないか。私の方が背も高いのに。入らない想像はしていたが、ちょっと大きいなんてことは考えてもいなかった。お酒のせいじゃなくてどきどきする。しばらくして席に戻るとにやにやしている諏訪さんと目が合ったので後で一発殴ってやろうと決めたのだった。