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▼ バレンタイン

2月14日。バレンタインデー。この日を決戦の日にする人間はもう少なくなったと聞く。私もそんなつもりは更々なかった。しかし今年は、今年こそは!そう意気込んで、ちょっとお高めのいいチョコを買ってきたのは昨日の話だ。手作りを渡すのはとりあえず無理だ。ハードルが高すぎる。本部に行って、もし会えたらちゃんと本命だと伝えて、チョコを渡そう。私の覚悟が決まれば、の話だが。




本部で隊のみんなに友チョコ用のフォンダンショコラを渡し終えて、とりあえずラウンジに行ってみる。ここなら沢山人もいるだろう。

「ナマエさん!!」

「米屋に出水に緑川!久しぶりだね〜、はいこれ。」

「おぉ!あざーっす!!」

あらかじめ義理チョコ用でラッピングしていたものを3人に渡す。

「あ、あと出水、太刀川にも渡しといて」

「了解でーす」

「ねぇねぇナマエさん、ランク戦しようよ〜」

「これ配り終わったらね。それまでは忙しいから。米屋と出水に遊んでてもらいな」

「じゃあ終わったらおれともランク戦やろうぜ!」

「いいよ〜。じゃ、また後でね」

米屋たちと別れてブースを歩いていると犬飼に会ってチョコをねだられた。二宮と辻の分も渡しといてと伝えて、

「あんまりうちの隊長にうざ絡みしないでね」

と言ったが、にやにやしながらえぇ〜とかなんとか言ってたから効果はないであろう。後からきた荒船とゾエとカゲにも義理チョコを渡してとりあえずラウンジを出てぶらぶら歩く。

「あ!木虎〜!」

「ミョウジさん、お疲れ様です!」

「はいこれ、木虎と綾辻の分ね。フォンダンショコラだからちょっとチンして食べてね」

「わ!ありがとうございます!これ、私からも」

木虎がかわいくラッピングされたチョコを出す。ツンツンしてるのに、こういうところがかわいい。

「ところで本命は渡したの?」

「え!いや!私は!…たぶん無理です…」

「そうか〜。残念」

「そんなことより!ミョウジさんこそ渡したんですか?」

「ふっふっふ。私はこれから!まぁ会えたら渡す感じかなぁ」

「頑張ってくださいね!!」

「私的には木虎にも頑張ってほしかったんだけど…」

そういうとまだわたわたしている木虎がかわいい。

「また男性陣がいない時に、いいとこのどら焼き持って隊室にお邪魔するね」

「じゃあそのときにでも渡せたか教えてくださいね!」

と言われたのでまた隊室にお邪魔しよう。木虎と別れるとそろそろ約束の時間である。胃薬の有無を確認して加古隊の隊室を訪れると

「待ってたのよナマエ!今日のは自信作なの!!」

と加古ちゃんがきらきらした顔でお出迎えしてくれた。堤がもう席についていて、ひきつった笑顔を浮かべている。あ、これ終わったわ私。迅の副作用がなくてもわかる。出てきたのはめちゃめちゃチョコの香りのするチャーハンだった。アーメン。



なんとか食べ終わって苦笑いでごちそうさま、と加古ちゃんに告げて、私はその場から動かない堤を支えて諏訪隊の隊室を目指す。私の2倍位あるチャーハンを食べきった堤は漢だ。流石である。

「諏訪さん、お届けものでーす」

「うお!!おまえらあれ食って来たのかよ!!」

「そうですよ、バレンタインらしくチョコ味でした…」

そういいながら思い出すと加古ちゃんには悪いけど、ちょっと嗚咽が出そうである。普通に作ればおいしいのに。永遠の謎である。なんとかしんだままの堤を座らせたところでオサノと日佐人がやって来た。

「ナマエさんお疲れ様でーす」

「はいこれ、オサノに」

「わーい!ありがとうございます〜!あ、私も!」

そう言ってオサノがチョコを取りに行っている間に、みんなの分も渡す。

「こっちは諏訪さんと日佐人の。堤の分はここ置いときます」

「おぅサンキュー」

「ミョウジさん、ありがとうございます!」

「どういたしまして〜」

「ところでおまえ、風間には渡したのか?」

「いや〜、会えたらとは思ってるんですけどね。会えるか不明です」

「意外とあっさりしてんだな」

「ははは〜」

それはそうだ。ただ渡すだけなら簡単に受け取ってもらえるだろうが、これは本命です!って渡す予定なのだ。いくら気合いを入れたからといって正直なところ、まだ踏ん切りがついていない。オサノにもらったチョコを食べ終わって私は諏訪隊の隊室を後にした。



しばらく歩くと風間隊を発見する。風間さんはいないようだ。とりあえず菊地原の目の前で渡すのは無理なのでラッキーである。

「おーい」

「ナマエさん!」

「お疲れ様〜。はいこれ、みかみか」

「わ!ありがとうございます!私も」

「どういたしまして〜。みかみかもありがとう」

今日もみかみか大天使。超かわいい。

「菊地原と歌川もはいこれ」

「ありがとうございます!」

「別にいらなかったのに」

歌川もいい子だ。だが菊地原は私のことが嫌いである。というかむしろ風間さんに好意を持ってる人は全員嫌いって感じ。

「まぁまぁそう言わず」

「ていうかこんなしょぼいもん風間さんにあげたんじゃないよね」

「おい菊地原!」

「しょぼいもんって失礼だね君は…でも菊地原の言うとおり、風間さんにはちゃんとお高めのチョコです!手作りなんて普通に無理だからね!」

えっへんと効果音がつくかのように自慢気に言う。

「どうせ渡せないくせに」

「今日は一段と厳しいね…でもちゃんと渡すんだから!じゃあね!」

捨て台詞のようになったが、ここまで来たらもう腹を括って渡すしかない。そう思って、滅多に連絡できない番号をコールした。数コールして電話が繋がった。忙しい人なので、電話に出てくれただけでとりあえず安堵する。聞けば今日はもう仕事はないらしく、久しぶりにランク戦を申し込めば少しなら、と了承してくれた。ラウンジで待ってますと伝えて電話をきる。

「△△、待ったか」

「いえ!お疲れ様です!」

ラウンジで合流してランク戦ブースに向かう。
ブースに入る直前に、私は覚悟を決めた。

「風間さん、これ。もらってください」

「あぁ、ありがとう」

「あのこれ!本命…なんで!私、風間さんのことすきです!」

これ位はっきり伝えれば、流石の風間さんも気づくだろう。風間さんが何か言う前に、

「返事とかいらないんで!私がそういう対象になってないことはわかってますから!なんで、これから頑張ります!期待しててください!」

とりあえず伝えたいことを伝えて、ささ!いざランク戦を!と、風間さんを急かす。さて大変なのはこれからだ。どのくらい長期化するかわからない戦いを前に、私は次の作戦を考えるのだった。


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