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▼ 黒トリガー争奪戦後

「なんでなまえさんたちはこの間の黒トリガー奪取の任務にいなかったんだよ」

「は?黒トリガーダッシュ?そりゃわたしたちが黒トリガーじゃないからでしょ」

防衛任務が終わってうちの隊の全員で歩いていると、あー!と大声をあげた出水に捕まる。何事かと思ったら、太刀川隊と三輪隊と風間隊が大集合だった。後ろにいる米屋が苦笑いしているし、三輪にはまた親の仇のような目で睨まれていた。どうしたんだよいきなり。また情緒不安定か?黒トリガーでダッシュする任務とか迅さんと天羽にしかできないじゃん。しかし奈良坂が冷静に、わたしの脳内変換が間違っていることを教えてくれた。ああ、奪取。そっち。

「いや何それ物騒だな。誰から奪うの。盗賊ごっこ?」

「太刀川が盗賊とかシャレにならないからやめなよ」

「お前らちょっと周りに興味なさすぎるな?」

「太刀川さんは周りの評価に興味なさすぎるよね」

菊地原がどっちもどっち、と言いたそうなあからさまに興味のない顔をしている。いやお前そんな余裕なら三輪をなんとかしてくれよ。ずっとこっち睨んでるんだよ。

「やはりあんたは裏切り者じゃないか」

「またそれ?三輪、ボキャブラリーが少ないよ…ネタなら新しいの持ってきて」

「ふざけるな!」

わたしはふざけてないんだけどな。三輪が話通じないのはもう最近諦めてるので、黙って古寺と米屋に押し付けた。隊長の面倒くらいちゃんと見てくれ。すぐ裏切り者裏切り者言ってくるから、そろそろC級隊員とかで信じる人が出てきそうだ。

「で?黒トリガーをどこから強奪してきたの?」

ナマエさんがそんな三輪を可哀想な目で見た後、話を戻すように太刀川さんに問いかけた。三輪隊以外は遠征部隊だし、遠征時の話かもしれない。あれ、そういえばこいつら久しぶりに見たな。当真がいない学校は本当に平和だったけど柚宇ちゃんいないのがさみしすぎて死ぬかと思った。ナマエさんの問いに口を開いた太刀川さんに風間さんがいきなり蹴りを入れる。

「おまえらは馬鹿か。そもそも極秘任務だろう。ぺらぺらと部外者に喋るな」

「えっ私たち聞いちゃダメなやつなんですか?」

「いきなり人を呼びとめたかと思ったら機密事項喋っていくなんて迷惑にもほどがあります」

りっちゃんが酷く不快そうに顔を顰める。みかみかをはじめとするオペレーターたちがいないからってその顔はよくないよりっちゃん。ていうかこいつらの口の軽さどうした。そんなんでいいのかA級隊員。風間さんが頭が痛そうにしている。

「でもさぁ、なまえさんならどうせそのうち玉狛から聞くだろ」

「……出水」

「なに?玉狛が絡んでんの?」

「知りたいなら教えてあげるよ〜?」

「待ってなんでさぁちゃん知ってるの」

ふふふ〜、と笑っているうちのオペレーターは優秀すぎるな?どこからそんな情報持ってくるんだろうか。まあ、鬼怒田さんだろうな。いろんなトリガーを試作している関係でさぁちゃんは鬼怒田さんと仲がいいから。そうだと思いたい。間違っても上層部のデータベースとかハッキングしたりしていないって信じてるからね。そっとさぁちゃんから目を逸らす。面倒なことにはなるべく関わりたくないから聞かない方がいい気がした。

「城戸司令派と忍田本部長派と迅さんが戦ったんだって〜」

「うわぁ、物騒」

「なんで言っちゃうのさぁちゃん」

わたしの無言の意思表示は通じなかった。ていうかボーダー同士で戦うなよ。市民守れよ。忍田本部長派ってことは嵐山隊と迅さんVS太刀川隊風間隊三輪隊ってことだろうか。もしかしたら当真と冬島さんもいるかもしれない。大丈夫?それ家数軒壊してない?どっちが勝ったんだろうか。戦力的には城戸派が圧倒的だと思っていたけれど、迅さんがいるなら話がちがうだろう。

「まあそういうことでしたら、うちの隊どこの派閥にも所属してないですし」

「まあね。城戸派って言われた時に城戸一家の間違いじゃない?って極道扱いした隊長がいるもんね」

「だってそんな言い方されたらもしかしてパンピーじゃないのかもしれないって思うじゃん」

「思わねーけどな」

なんだよ。じゃあみんな城戸司令見てもなんとも思わないのか。なんかやらかしたら指つめさせられそうじゃん。ナマエさんも隊室ではわかるー!って言うくせに風間さんの前だからってここぞとばかりにみょうじはそういうとこあるよね、と言っている。あとで覚えとけよ。

「……まあ巻き込まれるの嫌だから詳しくは聞かないけど、なんか揉め事があったのはわかった」

「なまえさんは本当にもうちょっと周りに関心持ってくれよ」

なんでそんなことになったのか気にならないわけ?と半目で見てくる出水に、わたしは聞きたくない、面倒、嫌、と全身でアピールしてるりっちゃんと、にこにこしているさぁちゃんの顔を見る。ナマエさんは知らん。

「迅さんがわたしたちを呼ばなかったってことはそういうとこ考慮してくれてるってことでしょ」

無所属、と言葉にするのは簡単だけど、要するに後ろ盾がないということなのだから。派閥争いなんかに巻き込まれて厄介事を背負うのはごめんである。それに残念ながら人から物を奪って喜ぶようなジャイアン気質は持ち合わせていなかった。要するに、わたしたちはわたしたちなりにのんびり過ごせたらそれでいいのだ。迅さんはそういうわたしの思考を責めたりしないし、どうしてもわたしたちの力が必要な時以外は巻き込まないように考慮してくれる。そんなに気を遣ってて疲れないのだろうか、とは思うものの、迅さんのせいでわたしは三輪や緑川に無駄に絡まれた過去がある。というか現在進行形で三輪に睨まれているのでそこはもっと気を遣ってほしい。

「あんたのそういうところが!許せないんだ!」

「おいおいどうした三輪、生理か?」

「太刀川それセクハラだからね」

米屋と古寺の拘束を振りきってこちらに突進してくる三輪を、出水と太刀川さんを盾にして避ける。もともと知ってたけど太刀川さん屑すぎて引いたわ。ナマエさんと風間さんも心底軽蔑した目で太刀川さんを見ている。太刀川さんのことが苦手だとまだ話が通じる時に話していた三輪は、かなり憤慨した様子で太刀川さんを睨みつける。太刀川さんの後ろに隠れていたのだが、嫌な予感がしてそっと離れる。盾にしたのにもっと危険になるってどういうことだってばよ。なんかもうめんどくさいから隊室帰りません?とりっちゃんがわたしに耳打ちする。まったくの同意であるがナマエさんがちゃっかり風間さんの隣をキープしてやがる。もう置いてくか。

「あーなんかこっそり逃げようとしてる人たちがいるー」

こっそり踵を返すと、先程のりっちゃんの会話から聞こえていただろう菊地原がやる気のない声を上げた。余計なことを。りっちゃんが9割の殺意がこもった視線で菊地原を見ていた。大好きなみかみかのところの隊員だから。落ち着いて。

「なんで勝手に帰ろうとしてんのなまえさん」

「もう用件終わったでしょ…」

「わたしたち今エアリスが死ぬ直前だから早く進めなきゃなんだよ〜」

「えっエアリス死ぬの?」

さぁちゃんのネタバレでりっちゃんが死んだ。え?FF7やったことなかったの?エアリスは死ぬだろ。だからりっちゃんエアリス育ててたのか。ラスボスで使えないのに頑張るなぁって思ってた。ショックでぷるぷる震えるりっちゃんを奈良坂が宥めている。そういえば同じ学校か。りっちゃんが動けなくなってしまったら逃走ができない。さぁちゃんはごめんね=てへぺろ、と言った顔をしている。かわいいから許す。

「よしわかった。りっちゃん、今日はFF7はやめよう。うたプリにしよう」

「……誰ルートですか」

「りっちゃんの好きなぼちのせさんルートでいいよ」

「ぼちのせって言うのやめてください!」

りっちゃんも大概ちょろい子だった。そしてそのまま菊地原の腕をがし、と掴む。さっき逃げようとしたのをバラされたの、忘れてない。

「ちょ、なに。離してよ」

「え?菊地原も一緒にやるんだよ?」

にこにこ笑ってさぁちゃんとわたしで菊地原を引きずって歩く。もう止めるものは誰もいなかった。隊室に連れ込んだ菊地原の目の前で大音量で一ノ瀬トキヤルートのEDを流してやったら、またしばらく菊地原の姿を見なくなったのだが、風間さんと話している時のナマエさんへの当たりだけやたらと強くなったらしい。


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