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▼ 国近に報告

どうしても話したいことがある、と言って、出不精の柚宇ちゃんを引っ張り出して街に繰り出した。本当は今ちゃんにも聞いてほしかったのだが、どうしても都合がつかなかった。同じクラスだった高校生の時とは違って、大学生はとっている講義次第ではスケジュールが合わないし、高校生の時は出来なかった深夜の防衛任務のシフトにも入るようになって、余計に会いにくくなってしまった。そのため、今ちゃんには昨日のうちに電話をして話を済ませてある。落ち着いて話せるお店に入って、飲み物を頼んだ。緊張して、喉がカラカラだった。

「それで、今日はどうしたのかね〜?」

なまえちゃんに呼ばれたらすぐに駆け付けちゃうけど!冗談めかして笑う柚宇ちゃんに、深呼吸をして覚悟を決める。

「あのね、柚宇ちゃん」

とりまると付き合うことになった。覚悟を決めた割に小さい声だった。柚宇ちゃんは聞き取れただろうか。恐る恐る反応をうかがうと、柚宇ちゃんは驚いたようにいつもちょっと眠たげな目を見開いていて、それがみるみるうちに潤んでいく。え?な、泣くの?柚宇ちゃんが?ゲームに負ける以外で?

「ゆ、柚宇ちゃん?」

「う、うえ〜ん」

まさかの大号泣だった。慌ててハンカチを引っ張り出して対面に座る柚宇ちゃんの涙を拭こうと腰を上げて手を伸ばすと、そのままぎゅっと抱きしめられる。

「なまえちゃんよかったね〜〜〜!!!しあわせになってね〜〜〜!!!」

なおも泣き続ける柚宇ちゃんは、泣きながらそう言った。泣いて喜んでくれる親友のぬくもりに、わたしもつられて目頭が熱くなる。まるで結婚するみたいじゃん、と半泣きで笑うと、柚宇ちゃんも泣きながら笑った。ふたりしてお店で泣いてしまうという大失態を晒しながらも、わたしたちの気分は晴れやかだった。今まで、誰にもとりまるが好きだなんて言ったことなかった。バレンタインにチョコを渡したことだって、柚宇ちゃんと今ちゃんにも、うちの隊員たちにも言っていない。とりまるがわたしを好きになる絶対にありえないと思っていたから、とりまるが好きだと口に出して、叶わない恋を認めるのが怖かったのだと、今は思う。それでも、唐突に付き合うことになった報告をして、泣いて喜んでくれ る友達がいる。それがどんなに幸せなことか、身にしみて感じたのだ。昨日今ちゃんに電話で伝えた時も、電話口でとても喜んで、おめでとう、と言ってくれた。そのことを柚宇ちゃんに言うと、あたりまえだよぉ、と少し鼻を赤くして笑った。

「で?もちろん詳しく聞いてもいいんだよね〜?」

「い、いや、詳しくもなにも……」

「告白したの?されたの?なまえちゃんのことだから告白されたんでしょ〜」

「なんでわかるの!」

さっきまでとは打って変わってにやにや笑顔で詰め寄ってくる柚宇ちゃんに冷や汗が頬を伝う。こくはくとか、そんなに詳しく聞かれるのはなんだが気恥ずかしくて、むずむずする。さらっと流れだけ話すと、にやにやした柚宇ちゃんがそっかぁ〜と相槌を打った。

「それで、どう?烏丸くんと付き合ってみて」

「……や、やさしいよ」

とりまるは優しい。わたしに対して、とても。知り合ってから数年。わたしの生態について熟知されているのだろう。わたしがゲームをやっている時に邪魔はしないし、推しにきゃーきゃー言ってても文句を言わない。ただ、先日嵐山さんの顔のよさについて騒いでいたら面白くない顔はされたから、きっととりまるの中で基準があるのだと思う。でもそれは、よく考えたら付き合う前からだったような気もする。付き合って、何が変わっただろうか。少し考えて、思い当たる。

「触る手が、すごくやさしいの」

前からふとした時のスキンシップがあったけれど(しかも大体真顔だから実は結構怖かった)、付き合うようになってからは手をつなぐとか、髪を触るとかがすごく増えたと思う。そしてその手が、びっくり するくらい優しいのだ。日ごろ同年代だったり同ポジションの奴らにぞんざいに扱われているわたしからしたらとてもくすぐったい。

「……なんかわたしのなまえちゃんが烏丸くんにとられたみたいで妬けるなぁ」

「何言ってるの!わたしはいつだって柚宇ちゃんが一番だよ!!」

とりまると柚宇ちゃんのどちらかを選べと言われたらわたしは迷わず柚宇ちゃんを選ぶ。そのくらい、大切な友達なのだ。柚宇ちゃんは冗談だよ、と困ったように笑う。

「なまえちゃんがわたしのこと大好きなのはわかってるもん。ちょっとさみしいけど、なまえちゃんが幸せなのがわたしは一番うれしいよ〜」

天使か。もしかしてわたしは選択を早まってのではないだろうか。とりまると付き合わずに柚宇ちゃんに人生を捧げるべきだったのでは。

「さみしがる暇もないくらい柚宇ちゃんにべったりするから〜〜〜!!」

「え〜それはいいかな〜」

「柚宇ちゃん!?」

「今度今ちゃんも一緒になまえちゃんの勝負下着買いに行こうね〜」

「柚宇ちゃん実はちょっと怒ってるでしょ!」

べつにすぐ話してくれなかったことを怒ってなんかないよ、と悪い顔で言われる。小悪魔め。でも、次は今ちゃんも一緒に、3人で出かけようね、と約束した。環境が変わって、わたしに彼氏ができたとしてもわたしたちの関係は変わらない。だけどわたしはもし柚宇ちゃんが彼氏紹介してきたら絶対認めない。絶対にだ。


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