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詰め合わせ
あやかさんの誕生祝2019の推しメンSS詰め合わせです


冨岡義勇(鬼滅)
※冨岡義勇とお見合い結婚した話


暑かった夏がすっかりとなりをひそめ、朝や夜はすっかりと冷え込むようになってきた。わたしの旦那様である義勇さんは日が落ちてからが仕事の本番のため、夜はひとりで火鉢に当たって暖をとっていた。そのままひとりで眠りにつき、朝方になって帰って来る義勇さんにあたたかいご飯を食べさせてあげたいと思って義勇さんが帰ってくる前に起きておいしい朝食を用意する。そんな毎日を送っている。

「おかえりなさい、義勇さん」

「………ああ」

今日もあたたかいごはんとお味噌汁、そして焼き魚とお漬物をお膳に並べて義勇さんを出迎えると、義勇さんは言葉少なに返事をして上座に座った。もともと喋るのが不得手な人なので、食事中も料理の感想などを自分から言うことはない。

「お味は大丈夫ですか?」

「問題ない」

おいしいと言ってくれることはほとんどないけれど、心なしかいつもより柔らかい表情に気づいてからは、なんの不満もなくなった。ふふ、と笑うと、義勇さんが怪訝そうな顔をしてわたしを見た。そして何かを考えているのか、どこか遠くを見た後でなまえ、とわたしの名前を呼んだ。

「前にも言ったが、俺に合わせて起きていることはない」

「………ご迷惑でしたか?」

「そうじゃない。お前の負担になるだろう」

負担なんて、と言いかけてやめる。きっと否定したところで義勇さんが納得することはないし、人の機微にも疎い方だから自分の気持ちを正直に言う方が分かり合える。短くなくなってきた夫婦生活でわたしが学んだことだった。

「義勇さんのお帰りになられた時の顔が好きなんです。だからこれは、わたしのためなんですよ」

鬼と戦ってきて、家に帰ってきた時のふっと気が抜けたような顔。それを見れるのはわたしだけなのだと思うとうれしくて、毎日見たって見飽きることはない。

「………そうか」

顔を背けてそう言った義勇さんの顔は、ご飯を食べている時よりもさらに柔らかいものだった。





伏黒恵(呪術)
※津美紀の親友と伏黒恵


わたしの大好きな友達は今、原因不明の病気で寝たきりになってしまっている。昔からしっかり者で美人で気立てのいい津美紀が大好きで、漠然とこれからもずっと一緒だと思っていたのに。今では病院にお見舞いにきては返事をすることのない津美紀に勝手にひとりで話しかけるだけだった。

「……あ」

「あ、恵くん。こんにちは。またお邪魔してます」

「いや、津美紀も喜ぶから」

津美紀の弟の恵くんとは、津美紀繋がりで知り合った。中学生の時は一時期荒れていた恵くんには少し近寄りづらいこともあったけれど、姉想いな恵くんに、いつの間にか好意抱くようになっていた。今は全寮制の学校に通っているらしく、顔を合わせるのは津美紀のお見舞いで偶然会った時くらいであるが、忙しい恵くんよりもわたしの方が病院にいることが多いので津美紀に何かあったらすぐ連絡できるように恵くんが進学するタイミングで連絡先を交換した。

「学校どう?」

「……忙しいけどそれなりに充実はしてる」

「恵くん人付き合いあんまり上手じゃないけど友達出来た?」

軽口を叩くくらいはできるような関係になって、わたしの冗談に恵くんは少し眉間にしわを寄せながらも、一応、と答えてくれた。恵くんに友達ができるのはいいことだと思うし、津美紀も喜ぶと思うけど、なんとなく恵くんが遠くなってしまったみたいで寂しいな、と思う。

「寂しい、ってなにが」

「えっうそ、今口に出てた?」

こくり、と小さく頷いた恵くんに恥ずかしくなって両手で顔を隠す。わたしは、友達の弟を相手に、何を言っているんだ。羞恥心に耐えながら、ぼそぼそと理由を話すと、恵くんはちょっと呆れたように笑った。

「みょうじ先輩が津美紀の友達でいてくれる限り、俺と先輩の関係も変わらねえよ」

それは、喜んでいいことなのだろうか。わたしと恵くんの関係を変えるには、津美紀の友達というポジションを壊さなければ望みはないと言われているみたいで、少し複雑になってしまった。それでも、津美紀が大好きなのはもちろん、恵くんとこうやって話ができて、連絡ができるこの立場を捨てることもできなくて、わたしにできることは、うん、と頷くことだけだった。





神田ユウ(dg)

※ネタの神田と化学班の設定です。


「神田さぁ、蕎麦ばっかり食べてて栄養偏らない?」

「別に」

ずるずると目の前でざる蕎麦を啜る神田を眺めながら聞くと、また何か言いだしたぞこいつ、とばかりに嫌な顔で返事が返ってきた。無視しなかったのは無視したほうがわたしがうるさくなると知っているからだろう。

「いやいや絶対だめだよ。エクソシストは身体が資本!ほらわたしのピーマンあげる」

「ふざけんなそれテメェが嫌いなだけだろうが。いい歳して好き嫌いしてんじゃねェ」

「まだ10代だもーん」

神田の怒鳴り声をBGMにぽいぽいとわたしのナポリタンに入っているピーマンを器用によけてざるの隅に乗せていく。0.2割くらいは本当に心配しているのだから素直に受け取ってほしいところだ。いくら神田の身体が特殊でも、同じものばかり食べていたら栄養が偏って病気になる可能性だってあるわけだし。神田の場合、それが命を減らすことになる。和食は和食でももっとあると思うんですよ。でも蕎麦ばかり食べているのに神田の髪はさらっさらのつるっつるだし、肌も綺麗でハリがある。神田の境遇を知っていて言っていいことではないけれど、そこだけは本当にうらやましいと思う。わたしなんて化学班での日頃の不摂生が祟って最近肌荒れがひどいのに。

「まずお前は寝ろ」

「まだ徹夜1日目だもん」

「俺の周りうろつく時間があるなら寝ろって言ってんだよ」

「やっだぁ神田心配してくれてるの?やっさしー」

茶化しすぎたのか、神田の顔がマジギレ5秒前といった様相になり、鋭い目で睨まれる。普段平気で3徹とかしてしまうからこそ神田が心配しているのはわかっているけれど、わたしだって教団に神田がいる時は一緒にいたいと思うのだ。いつ会えなくなってしまうか、わからないからこそ。この戦争の最前線で戦っている神田はもちろん、わたしだって。過労死かもしれないし、両親のような突然の死かもしれない。科学班だから死ぬことはないとは、絶対に言いきれない。

「神田がいなくなったらわたしを叱る人がいなくなっちゃうからわたしも早死にするかもなあ」

「勝手に死んどけ」

神田の箸が器用にわたしが乗せたピーマンを掴み、そのまま自分の口に運んでいく。なんだかんだ言っても食べてくれるんだから、非常になり切れない男だ。ねえ、知ってる?わたし本当は、もうピーマン食べられるんだよ。好きなものも嫌いなものを、成長していくうちに変わっていく。きっと何も変わらないのはわたしが神田を大切に想う気持ちだけなのだろう。自分の食事を終えたのに、何も言わずにわたしが食べ終わるのを待っていてくれる神田にこっそり笑って、少しでもこの幸せが長く続いていきますように、と祈った。