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菅原の誕生日を祝いたい
「えっ!?今日スガさん誕生日なんですか!?」

馬鹿でかい声に、思わず手を止める。潔子先輩が、どうしたの?と私に問いかけたが、それどころではなかった。ちらり、こっそり盛り上がっている方に目をやると、そうなんだ、と照れ臭そうに笑う菅原先輩の姿。日向を筆頭とした1年生たちは、口々におめでとうございます、とお祝いしている。あの月島ですら、素直ではなくとも祝っているのだ。菅原先輩の人望がそこからうかがえるだろう。菅原先輩って…。潔子先輩にしか聞こえないくらいの声で呟くと、ああ、今日誕生日だよね。とクールに返された。知ってたんですか。マネージャーだし。私もマネージャですけど知りませんでした…!まあなまえはまだ選手のプロフィール見るような仕事はしてないから。知ってたなら教えてください!個人情報。どこまでも潔子先輩はクールで、私が菅原先輩に片思いしてるの、知ってるはずなのに、とむずがゆくなる。ぽん、と頭に潔子先輩の手が乗って、優しく撫でられる。ごめん。小さく零された謝罪に大きく首を横に振った。今からでも、頑張ります。そう宣言すると、頑張って、と応援してくれた。その笑顔が眩しくて、潔子先輩は本当に女神なのかもしれない、と頭をよぎる。そして後ろから聞こえてくる田中先輩と西谷先輩の騒いでる声から、そう思ったのは私だけではないということを知った。よくわからないけどグッジョブ!と後で背中を叩かれて、先輩たちも私のおかげで潔子先輩の笑顔とか見れるんだから私に協力してくれてもいいんじゃないですかね、と恨みがましい目で見つめておいた。

「みょうじ、何か悩んでんの?」

「えーっと、悩んでるというか、悩むにしても遅すぎたというか……」

頑張る、とは言ったものの、具体的には何をすればいいのか。今からじゃプレゼントを用意する事もできないし、女子力アピールとしてケーキとかを作ることだってできない。手ぶらでおめでとうございます、と言うのも、菅原先輩に恋をしている身としては納得ができなくて。どうしたものかと悩んでいれば、不思議そうな日向に顔を覗き込まれた。後ろには影山もいる。日向に相談しても何もためになることは返ってこなさそうだよなあ。どっちかって言うと、澤村先輩とか、東峰先輩とかに聞いた方がいい気がする。でも2人ともずっと菅原先輩と話してるし。

「うだうだ悩まれてたらめんどくせえからなんかあるなら言えよ」

「影山には女心はわかんないでしょ」

「女心なんて持ってたのか…」

「どっからどう見ても恋する乙女でしょ!?」

バレーしか能がない影山には恋愛なんて無縁だもんね、知ってる。鼻で笑ってそう言えば、いらっと来たのだろう、思い切りボールをおでこにぶつけられた。こんな時だけ精密なコントロールが憎い。ひりひりと痛む額を抑えた。本当に女の子に向かってなんてやつだ。私は真剣に悩んでいるというのに。バカなんだから色々考えても無駄なんだよ!影山にだけは言われたくないんだけど!たしかに。月島!てめえは黙ってろ!山口だってそう思うもんね!?え!?あ、うん。ぎゃいぎゃいと1年生で集まって騒いでると、もう一度影山にボールをぶつけられて、さらに澤村先輩に、うるさい、と怒られてしまった。本当影山に関わるとロクなことがない。怒る澤村先輩を、まあまあ、と宥めてくれる菅原先輩を見習うべきだと思う。18歳になった菅原先輩は昨日に増して凛々しく見える。見惚れていると、いつのまにか私の後ろに来ていた潔子先輩に襟を引っ張られて仕事に連れ戻された。溜息を吐いている姿も麗しい。浮かれてるのもいいけど、やることはちゃんとして。もっともな言葉に俯いて、ごめんなさい、と謝ると、また頭を優しく撫でられた。部活が終わって、片づけをして着替えて外に出ると、まだみんないて、澤村先輩がスガの誕生日だから寄り道しないか、と私と潔子先輩を誘ってくれた。潔子先輩が頷いて、菅原先輩におめでと、と言うと、菅原先輩が本当にうれしそうに眼を細めて笑う。ずきん。やっぱり潔子先輩くらいになるとおめでとうの一言だけでこんなに喜ばせることができるんだろうなあ。この後にいくら私がおめでとうって言ったところで、霞んでしまうんじゃないだろうか。

「みょうじ、部活中影山にボールぶつけられてたけど大丈夫か?」

「えっ!?だ、大丈夫です!石頭なので!!」

「ちょっと見してみ」

自然な動作で私の前髪をよけた菅原先輩が、今日ぶつけられたおでこをまじまじと見た。やだ、ニキビとか、できてないかな。むしろハゲとかあったらどうしよう。どきどきと心臓が鳴りやまない。

「あー。ちょっとたんこぶになってんなー」

「たんこぶくらいどうってこと…」

「女の子なんだからちゃんとしなきゃ駄目だべ」

家帰ったら冷せよ。ぽんぽん、と私の頭を撫でて菅原先輩が笑った。女の子だからって、ちゃんと私を女の子として見てくれてるんだ。心がほっこりとする。今なら、言えるんじゃないか。行くぞー、と聞こえてくるみんなの声を聞こえなかったふりをして、菅原先輩、と小さく名前を呼ぶと、ん?と優しい笑顔が降ってくる。

「今日、お誕生日だって…」

「おー。なんか照れんな」

「私、知らなくて、なにも用意とか、」

尻すぼみになっていく言葉に、菅原先輩がてい、とチョップをしてきた。うまくたんこぶを避けているのが菅原先輩の優しさだろう。ちがうだろー。何が何だかわからない。なんで今チョップをされたのだろうか。混乱してただただ菅原先輩を見つめる。初夏のむしむしとした空気が、肌にまとわりついている。でも、それとは別に、緊張して汗がにじむのがわかった。

「おれはまだ、みょうじから一番聞きたい言葉を聞いてない」

プレゼントとか、そういうのの前に、あるだろ。ちょっと怒った顔をした菅原先輩に、思い当たることがひとつあって、あ、と声を漏らす。ぎゅ、と唇を噛んでから、精一杯の笑顔を作る。

「菅原先輩、お誕生日おめでとうございます」

菅原先輩は、潔子先輩とか日向に言われた時よりも嬉しそうに、少し頬を赤く染めて、ありがとう、と笑った。





スガさんお誕生日おめでとうございます!とてもすきです!!!!