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それは儚く

06.知らないのが当たり前

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奴はまた来る。
確証はないがそんな気がして、待つことふた月。




「こちらから会いに行くといってもな…」




風間千景の場所は判らないし、そもそも私は吉原を離れられない。
吉原の遊女がもう吉原を出られないように、吉原の姫だって出ることは許されない。

私が去れば、ここは崩れる。

吉原を仕切っているのは男共だが、遊女が素直に男の話など聞くわけがない。
そんな状況で、私は仲立ちをしていると言ったらいいのか。
とにかく面倒で仕方ないことをやっている。
しかし、それだって立派な番人の仕事。

私が決めた道だ。
違えることはないし、私はちゃんとした番人になる。
上の男共も、遊女たちも…私を番人だとは認めていない。


遊女はとにかく、上の者にも姫と呼ばれると少しきつい…。
母をよく知らない人でも、私と母の違いはあからさまなのか。


………総合して、風間千景が吉原に訪れない限り私は彼に会えない。
奴しかいないんだ。私の出生を知る可能性がある者は。

私の憧れた母をよく知る男。
そして私は父についての情報は皆無。奴なら知っているかもしれない。




「姉上、風間千景は…」

「わちきは知りません」

「…来ていないのかと問おうとしたのだが?」

「どっちにしろ来てないでありんす」




沈黙。押し黙るしか私にはできなかった。


と、血が騒ぐような感覚を覚える。
何かがきた。




「姫さん!!千景様がいらしたでありんす」




何かが来た…それは風間を指すのか。
私と奴はあまり縁もないのに、なんというか……不自然だ。
私と風間に接点はない。
唯一母がいるが、私と風間の関係に直接関わるものじゃない。

…風間が人間じゃないのだとしたら、それに胸騒ぎを覚えたのか。
だが…そしたら姉上も気付くはずだ。そんな様子は見られなかった。

ならばなぜ………




「姫さん、千景様をどちらに案内しましょう?」

「…ここで良い」




すべて、奴に聞けば判ることだ。





知らないのが当たり前だった

( でも今は知りたい )
( 私は、私を理解していないから )




◎自分が判ってないのは私です。行動に目的が見えない(´Д`)
20120320




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