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それは儚く

04.母のように

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月明かりが眩しい、と感じたのは久しぶりか。
何故だか酷く愉快だ。

風間千景。
あやつの情報はなかなか手に入らない。
腕のいい刀の使い手という情報は入っているが、消息などは全くわからない。

今のこの国の住人は幕府に管理されているものだと思っていた。
しかし風間千景の記録がない。




「姫さん、上がってるでありんす」

「……何が?」

「口角でありんす」




口角…?




「姉上、それはつまり…笑っている、と?」




姉上は頷く。

確かに、愉快で、楽しみで、落ち着けない。
私はちょうど刀を持っていなかったし、刀を交じらわせたわけではない。
だが絶対に強い。それだけは判る。

これが母の血だというのも皮肉だ。
私はそういうことが判るだけで母のように強くない。

ただ、刺客としての奴ではなく、普通に風間千景と話してみたい。
それだけだ。




「風間千景…でありんした?あの男は」

「それがどうかしたのか?」

「姫さんも恋をするようになったようでわちきは嬉しい限り…姫さん?」




疲れが一気にきた。
姉上はこんなことを考えていたのか。

姉上は私が番人を捨て姫になることを望んでいる。
恋をするだなんて本当にただの女だ。姫にふさわしい…。
だがもちろん、私は姫になんてならない。

恋に溺れて自分を見失うなんてまっぴらごめんだ。
そういう遊女をたくさん見てきたし、私には救いようにない状態だった。
だから私は恋なんてしない。
姫にだってならない。


私は番人になることだけ考えていればいい。




「姉上…」

「はい」

「私はまだ…母には遠いか?」

「…わちきには答えにくい質問でありんす」




姉上はいつも濁す。
それが質問に対して否定だということも、私は知っている。




「強くならなきゃ…」




そう、強くならなきゃ……。
風間千景にも勝てるくらいに…。





母のように強くなる




◎ミステリヤスキャラには適任の風間さん。
20120305




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