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それは儚く

11.繋がり

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先日入手した銃は、今までのものとは比べられないほど使いやすいものだった。
玉は一個できれないし、なにより小さいのが嬉しい。


つくづく人脈とは大事だと思い知らされた。
銃を譲ってくれたのは不知火という男であるのだが、元を辿れば風間の知り合い。
他にも一度だけ天霧という男も来たことがある。

風間の知り合いであるから当たり前ではあるのだが、なにかが違う。
吉原に来る男とは、格が違うと言ったらよいのか。
力も伴う彼らの堂々とした姿には、威圧感さえも感じる。
ここまでくると風間の妹であるのが恥ずかしいくらいだ。




「風間。不知火殿が次にいつ来るか判るか?」

「……何故だ」

「彼は貴様と違って射的について教えてくれるからな」




そう、不知火は本当に親切な男だ。
銃に優れ、私にも判りやすく教えてくれる。
“不知火殿”なんて呼んでいるが、師とも呼べる存在に変わりない。


唯一不満があるとすれば、ややよそよそしいことだ。

見るかぎりでは不知火も天霧も風間に仕えているようで、天霧に至っては風間様とまで呼んでいたか?
その風間の妹である私も、天霧には千春様と呼ばれているわけだが。
不知火にも距離を置かれているだろう。




「…あやつに殿などとつける必要はない」

「兄の出来が悪いと妹はしっかりしてると言うだろう。貴様の礼儀の悪さは頂けん」

「だが……」




少しずつ判ってきたことだが、私と風間は変なところで似ている。
融通が利かないところや、負けず嫌いであるとこ。
きっと父からの遺伝なんだろう。
見た目に関しては、髪の色だけだが。

…………実を言うと、前髪も似ている。
昔から念入りに濡らしたり乾かしたりしているため真っ直ぐだ。
しかし、なにもしなかったら風間そっくり。それで笑われるのも避けたい。




「私は不知火殿を師匠と呼びたいぐらいだ。そんなことしたら貴様は憤慨するだろ?」

「当たり前だ」




即答か、と呟いたら風間に睨まれた。
それが可笑しくて思わず笑ってしまう。


私たちは腹違いの兄妹であり、元許婚だ(風間は未だに許婚と言うが)。
変わった待遇だが、この環境だからこうやって風間と話せるのかもしれない。
母に、父に…風間の母に、感謝している。




「…私にはもう家族なんていないと思っていた」

「?」

「だが私にも貴様のような兄がいたのだな」




母が亡くなってから初めて温かい気持ちになれた。
自分が誰かを守らなくてはならなくて、気を抜くなんてことできなかったのに。
頼ってもいい存在ができた。

あまり母を覚えていない私に、家族を教えてくれた。
遊女たちを思うのとは違う。もっと特別な……。
……絶対的な繋がりのある人がいたんだ。




「風間は此処をいずれ出て行くだろう?」

「あぁ」

「そのときは…そのときは、私を此処から連れ出してくれないか?」

「!?」




驚くだろうな。
私は番人になることだけを夢見ていた。それを風間も知っている。


でもどうしても嫌だった。
風間と離れるのが、どうしても嫌なんだ。




繋がり

( 私がいなくなったら吉原の均衡は崩れる )
( でも私ひとりには荷が重いって昔から知っていた )




◎家族愛というか家族依存症というか…家族って大切ですよね
20120920





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