それは儚く
▼10.意地悪な人
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硝子の珠…ビー玉と言ったか?
それを手の中で転がし遊ぶ。
この行為が楽しいわけではないが、光に透かしたときの輝きが好きだ。
同じ丸い玉でも、銃の玉では似てもにつかない。
………今日の私はいつもと違う。
風間の前で意地を捨てようと思う。
理由は単純で申し訳ないのだが、奴に稽古をつけてもらいたい。
少しばかり前になるが、私は風間には劣ると確信している。
争う必要などないからいいものの、風間に勝てたら……とは思う。
そして私は、
「番人になりたい…」
「姫が戯言を」
「貴様のような兄を持っているのだから、素質はあるはずなんだが?」
「今のお前では無理だ」
………真面目な顔で言われたら反論の余地もない。
ないのだけれど、断言する必要まであったのか?
まぁそれは置いておくとしよう。
腹が立つには変わりないが、さして大きな問題でもない。
奴は“今は”と言った。
私の目的は、奴に稽古をつけてもらうことだ。
「風間、稽古をつけてはもらえないだろうか」
「………は?」
「稽古だ。貴様は私より遥かに強いからな」
「断る」
ビー玉が指の間をすり抜けた。
「………少しは迷ったって…身内には厳しいのか?」
「貴様だからという問題ではない。女と戦うのは好かん」
「…………」
戦うとは言ってないが…そうか。
ならば風間千景、私にも奥の手がある。
「………遊女たちも貴様を気に入っているからな。1日くらい貸したっていいぞ」
あまりこういうやり方はいただけないが、“風間様になら…”とか言いながら顔を赤くしている女はたくさんいる。
問題はない。
更に言えば、得をする者も多いはずだ。具体的に私とか。
ふと上を見上げたら風間と目が合った。
上………?
「…なぜ私を見下ろすように立っている?」
いつもなら、向かい合うように座敷に腰掛ける。
加えて基本的に会話しかしない。
そもそも立つ必要がない。
「風間?」
「もし俺がお前を指名したらどうする」
「…………」
反応が薄い私を、ここまで焦らせるのは風間だけだ。
意地悪な人
( さっき言ったことはなしだからなっ!!! )
( 稽古はいいのか? )
( …………いらん )
◎この連載でギャグが書けるとは…!
20120524
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