それは儚く
▼09.嘘は無数
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なんというか……なんなんだ?
「おい風間。貴様いつまで居座るつもりだ?」
「さぁな」
「………」
別に奴がいて問題があるわけではない。
ないのだけれど……。
今までに私の部屋が煩くなることがあっただろうか。
正確に言えば、部屋の周りだ。
遊女たちが群がっているのがどうにも気に食わない。
「風間様は姫さんの兄上なんでしょう?」
「さすが番人の娘、可愛らしい子とは思ってありんしたけど…」
「兄上様も凛々しいお顔でありんす」
「美男美女とはよく言ったもので」
……………。
姉上は何処へ行ったのやら。
今私が働けと言っても、聞く耳を持たないだろう。
それほど彼女たちは舞い上がっている。
すべては目の前にいる風間千景という厄介な男の所為だ…!!
私に風間を追い出すだけの力があったら……
「千春」
「なんだ風間」
「貴様は人間…か?」
「なにを言う。姉上と同じような鬼、などの妄言はよせ」
そうか、と淋しげに風間は呟いた。
……ちょっと待て。
なぜ腹違いの兄である風間が、私に人間かと問う?
そんなの私より詳しいはずだし、人間であることが普通じゃないか。
ここは、私を化け物だと仮定しよう。
その場合母と父の両方、もしくは片方が化け物となる。
…………やめよう。非現実的すぎる。
「……貴様もただの人間だろう?」
「違う、と言ったらどうする」
思わず口角が上がった。
「ただの虚言だ」
嘘は無数
風間は人間じゃない、なんて
なんとなく判ってたんだ
◎2人にはもうしばらく兄妹ほのぼのライフ(!?)を楽しんでほしい…
20120428
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