それは儚く
▼08.初恋の人
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吉原には美しく強い姫がいる。
その噂を聞きやって来たのはいいが、彼女を見たとき驚いた。
あの人にそっくりだった。
母の友人であり、父と恋に落ち……俺の初恋であるあの人に。
「天霧、貴様は運命とやらを信じるか?」
「…信じる信じないの問題ではなく、間違いなく彼女は妹君でしょう」
「根拠はないだろう」
「ありますよ」
「…?」
「その黄色い髪は父譲りだと言ってませんでしたか?」
……そうだ。
あいつ、南雲千春の髪は間違いなく俺と同じ色。
俺はあの髪の色をした人間…いや、鬼を3人しか知らない。
それで容姿はあの人そっくりとなると……。
「……やはり父とあの人の娘になるのか」
「そう言ったんでしょう、貴方は」
「あぁ………」
確信はないのに、言った。
いつも俺の話を聞いてくれたあの人の目にそっくりだった。
それが嬉しかったのかもしれん。
あの人が父との子を授かり、あの人が姿を消し……。
あれは吉原に姿を消したということか。
「にしてもおかしいですね」
「おかしい?」
「あまりにも短命すぎませんか」
「奴が赤子のときというと…あの人はいくつだ?」
「……30にも満たないと思いますが」
確かに若すぎる。
人間の寿命が50を過ぎるようになった。
その人間だとしても短命だが、あの人は鬼だ。
容易く死ぬわけがない。
吉原でなにかあったのか………?
「…まぁいい。しばらく吉原に留まる」
「判りました」
初恋の人
◎幼いちー様は年上好きだと思う。…すみません、私の希望です
20120419
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