薄桜鬼 | ナノ
克服?
「…今何て言った?」
『だから、馬鹿な攘夷をズタズタにしてきた』
「…姉貴さ、いい加減…ふざけるの止める気になんねぇ?」
♪
彼女は藤堂平助の姉であり、新撰組唯一の女隊士である。
美人なので女に飢えた隊士達の目の保養にはなるが、それ以上は望めない。
「世名さん」
『それ以上近寄らないで。貴方死ぬわよ』
驚異の男性拒否性と脅威の戦闘力によって平助以外は近付けない。
土方にも、「その男性拒否性をどうにかしてくれ、せめて単独行動を止めてくれ」とよく言われる。
まぁその単独行動が今回みたいなことで…。
「姉貴さ、もし大怪我したらどうするつもりなんだよ」
と、弟に説教される始末である。
『武士だもの、潔く死ぬわ』
ただ、効果があった試しはない。
誰か…姉貴のこと説教してくんない?
♪
「だから、世名さんが怪我すると皆困るんです!」
「俺なんか普段からヒヤヒヤだよ。単独行動ばっかしてるから」
『…ご心配どうも。でも大丈夫よ、私強いから』
平助は、よく考えた。
…男はダメだけど女は大丈夫ってことで千鶴なら…!
「もし風間とかに会ったらどうするんだよ」
『鬼を相手にするつもりは無いから』
「答えになってませんよ…」
意味もなく悪戯に時間だけが過ぎていく。
そんな中、ある意味で救世主が現れた。
「世名、団子食いに行かねーか?」
『え、今話し合い中なんだけど』
と、原田左之助の手が世名の肩に触れる。
平助はあ゛ー!と濁った悲鳴をあげた。
奇声のが正しいだろうか。
しかし、平助の思いとは裏腹に何も起こらなかった。
「いいじゃん、行こうぜ」
『え、えぇ…』
平助と千鶴2人揃って口を開ける。
遠くから聞こえた声。
「もう単独行動すんなよ?」
『…うん。…左之と一緒にいる…』
余計に口が塞がらなくなった。
克服?
(千鶴…今の…)
(……原田さんと世名さんって)
◎原田さんはきっと誰とでも話せるはず!
110712