薄桜鬼 | ナノ
嘘つき*
「世名、愛してる」
「大好きだ」
「世名も言って?」
『…大…好き』
♪
彼女と南雲薫はカップルと呼ばれる関係にある。
彼女、世名は南雲薫が大好きだった。
冷たさ。
その中にある優しさ。
そして家族への愛。
世名は大嫌いだった。
家族が。
みんながみんな自分しか見ていない。
彼女の存在なんてどうでもいい。
望んでない娘だ。
そんな認識。
だから羨ましかった。
仲の良い兄妹。
憧れた家族がそこにあった。
そんな家族の一員になりたかった。
だから南雲薫が大好きだった。
♪
付き合い始めて気付いた。
薫は世名をもちろん大事にしてくれてる。
しかし違う。
彼が守りたいもの。
それは世名じゃない。
雪村千鶴。
始めて会ったときびっくりした。
そっくりだった。
千鶴と会った後に薫と会ったから、薫と会ったときの感動は覚えてない。
ただし、とにかく千鶴との出会いが衝撃的だった。
だからもうわかっている。
彼の見ている世名は世名じゃない。最愛の妹。
妹を愛せないなら妹に似ている女の子を愛せばいい。
きっとそんな考え。
♪
「世名、愛してる」
違う。
薫が愛してるのは私じゃない。
「大好きだ」
そんな嘘にまみれた言葉なんていらない。
私を見ないで。
「世名も言って?」
言わせないで。
もう好きになれない。
私は貴方の欲求不満の道具じゃない。
そんな目で…見ないで。
『…大…好き』
どうしても…嫌いにはなれないから。
嘘つき
◎千嘉様リク
110708