薄桜鬼 | ナノ

嘘つき*





「世名、愛してる」


「大好きだ」


「世名も言って?」


『…大…好き』









彼女と南雲薫はカップルと呼ばれる関係にある。



彼女、世名は南雲薫が大好きだった。



冷たさ。
その中にある優しさ。
そして家族への愛。



世名は大嫌いだった。
家族が。



みんながみんな自分しか見ていない。
彼女の存在なんてどうでもいい。



望んでない娘だ。



そんな認識。



だから羨ましかった。
仲の良い兄妹。



憧れた家族がそこにあった。



そんな家族の一員になりたかった。



だから南雲薫が大好きだった。









付き合い始めて気付いた。



薫は世名をもちろん大事にしてくれてる。
しかし違う。



彼が守りたいもの。
それは世名じゃない。



雪村千鶴。
始めて会ったときびっくりした。
そっくりだった。



千鶴と会った後に薫と会ったから、薫と会ったときの感動は覚えてない。



ただし、とにかく千鶴との出会いが衝撃的だった。



だからもうわかっている。


彼の見ている世名は世名じゃない。最愛の妹。



妹を愛せないなら妹に似ている女の子を愛せばいい。



きっとそんな考え。









「世名、愛してる」




違う。
薫が愛してるのは私じゃない。




「大好きだ」




そんな嘘にまみれた言葉なんていらない。
私を見ないで。




「世名も言って?」




言わせないで。
もう好きになれない。



私は貴方の欲求不満の道具じゃない。



そんな目で…見ないで。




『…大…好き』




どうしても…嫌いにはなれないから。









嘘つき




◎千嘉様リク
110708


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