薄桜鬼 | ナノ
家族の味
母の味って…誰だってあると思う。
それが、彼女にとっては
『カレーライス!』
なのだ。
「うん。好きだったよね。」
『ありがとう、千鶴お姉ちゃん。』
千鶴は従姉妹で、現在は義理の姉である。
小さいとき親を失った彼女は養子として雪村家に住んでいる。
「もうすぐ、カレーできるから薫呼んできて貰っていい?」
『うん!!』
ドタバタと音をたてながら階段を上がる。
と、ちょうど薫が部屋から出てきた。
『薫お兄ちゃん。』
「夕飯でしょ?そんな大きい足音で階段かけのぼってきて…。
来年高校生なんだよ?お前は…。
ちょっとは自覚したら?」
彼女は、苦笑しながら逃げようとする。
偏差値30前後の彼女は高校生に成れるかさえ怪しく…。
高校生というのは禁句の一つ。
それを薫はあっさり言ってしまう。
「はぁ…。勉強なら教えてやるから。」
『本当!?』
薫は、ゆっくりと頷いた。
『やったッ!!あ、カレーライス食べにいこう?』
「はいはい。」
──こうして、大好きな“家族”との楽しい夕飯を食べる。
カレーライスは家族の味。
家族の味
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110603