薄桜鬼 | ナノ
喋らない、
『土方さんおはようございまーす』
「…元気だなお前」
『土方さんが疲れてるだけです。あ、沖田さんおはようございます!』
「朝から明るいね、世名ちゃん」
『さっき土方さんに同じようなこと言われました。原田さんおはようございます!』
「おはよ。昨日遅くまで起きてなかったか?無理すんじゃねーぞ」
『大丈夫です、私不眠症みたいなのがありまして』
「それはそれで心配なんだが…」
『大丈夫ですって。近藤さんおはようございます』
「おはよう。今日も相川君は元気だな」
『それだけが取り柄ですから。平助君おはよー』
「おはよー世名。ふぁ…」
『眠そうだね、相変わらず』
「相変わらずってなんだよ!」
こんな感じで私の朝は始まります。
新撰組に拾われてから早ふた月。早いもんですよ案外。
すっかり新撰組のみなさんに馴染めたつもりです。千鶴ちゃんとも。
ただ、私的に1つ問題があるんですよね。
『おはよう千鶴ちゃん』
「世名ちゃんおはよう。あ、斎藤さんおはようございます」
「…おはよう」
『おはようございます!』
「……」
『(…目、反らされた)』
千鶴ちゃんには返事して私は無視ってどういうことですか!?遠回しに「俺は相川が好かん」ってそう言いたいんですか!?泣きますよ私。
あれ、好かないって遠回しに嫌いってことですよね?
私的問題はこれです。
斎藤さんとは喋ったことないんです。無視バンザイですよコノヤロー!!
千鶴ちゃんとは普通に話すし、新撰組のみなさんともよく喋ってます、斎藤さん。
でも私だけ全力で無視なんです。
…斎藤さんに一目惚れした私はどうすればいいんですか?
* * *
『(八百屋さん八百屋さん)』
『(あ、帰りに団子買って帰ろ)』
土方さんに頼まれてお使いの途中です。
千鶴ちゃんは危ないからいつも隊士の方と外を出歩くんですけど、私はなんにもないです。私これは差別だと思うんですけど、1人のが楽なんで何も言いません。
なんでも、木刀で、ですけど平助君とやって負かしちゃったからみたいですよ。さすがに沖田さんや土方さんには負けましたけど。
それにしても物騒ですよね最近の京は。
面倒なことに首突っ込むなって土方さんに言われてるから手は出しませんけど…。
嫌がってる女の人を無理矢理引っ張る男がちらほら。威張ってる攘夷浪士がちらほら。あ、あの人今盗みしました。
物騒ですねー…。
「おい女」
『(…女って誰?え、私じゃないですよね)』
「無視すんな!!」
『!!!』
手を掴まれた。しかも力強い。
え、え、どうすればいいですか私。
「ふん、可愛い顔してんじゃねーか。来い」
『(え…え…)』
なんか泣きそうです。
なんで新撰組の方が誰一人いないんですか?
『斎藤…さん』
「あ?なんか言ったか?」
『いえ!なんでも…ないです…』
どうしようどうしようどうしよう。
私はどうしたらいいですか。誰か助けてください!
刀だって今抜けませんよ、片手だけじゃ…。
「うぁ…」
『え?』
下ばっかり見てたから気付かなかった…。
今男が誰かに斬られました。
誰だか知りませんが感謝です感謝…。
え?
「行くぞ相川」
『あ、はい…』
斎藤さん…ですよね。
引っ張られてる状態なんで後ろ姿しかわかりませんけど…隊服に白い首巻きって斎藤さん以外有り得ません。
『斎藤…さん?』
「…なんだ」
『いえ…すみません。…あ』
私、聞いていいですか。
相川無視事件の真相ですよ!大分可哀想な感じになってましたからね。
『なんで私無視されてたんですか』
「っ!!」
今無言は厳禁です。
こうなったらもう意地。何が何でも聞き出しますよ。
『斎藤さん』
「そ…それは…」
『それは?』
「…無視していたわけでは…ない」
…あれは無視以外の何者でもありません。
辛かったです、あの差別感。
私が不満なのが伝わったのか、斎藤さんは小さくため息。
私何も悪くないですよ。
「好き…なんだ」
『え?』
「相川が好きで…喋れなかった」
喋らないじゃなくて、喋れない
( そんだけですか!? )
( … )
( 大丈夫ですよ、私も斎藤さん好きですから )
( !!! )
◎千鶴ちゃんがテンション高い感じを目指したら変な感じになりました…
20111103