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狐の孫

32.憧れの妖

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「おい…ゆら、どういうことだ」

「身体は豊臣さん。中身は羽衣狐言うたら判る?」




ゆらちゃんが現れた直後、すぐにリクオ君も来た。
羽衣狐を倒せるのはリクオ君だけ…だけど、今のリクオ君は無理だ。

2人とも優しすぎる。
多分、私が諦めたとしても2人はそれを許さないから。




『どうした?ぬらりひょんの孫。殺らねば殺られるぞ』

「うぁっ!!」

「奴良君!!!」




今のところ、お姉様は遊んでるだけ。
リクオ君たちを殺そうとはしてない。

でも……お姉様の好奇心が失せたらどうする?
お姉様は容赦なく2人を傷つける。


私は…………………




 * * *




鬼童丸に羽衣狐の依代を持たせ、私はその横を歩いている。
もうすぐ百紅の場所に着く。

もうすぐ………私の野望に向けての計画が実行できる。


と、いきなり鬼童丸が立ち止まった。




「…………」

「……どうしたの?鬼童丸」

「やはり…見た目は百紅様でも全く違うのですね」




………改めて見てみると、確かに違う。
あの雰囲気は狐の孫という妖怪のものじゃない。
あの雰囲気では狐の孫という花は“応えてくれない”

所詮狐は狐。
狐に愛される雰囲気なんて纏えるわけがない。


そういえば




「…………私初めて祖母に会うんだ」




そう考えると、少しだけ緊張する。
私が、父がひいた異形の血はすべてあの妖怪のもの。

さっき百紅が思ってた“お姉様には逆らえない”っていうのも、、少しだけ判るかもしれない。
もちろん、それは私の望む狐の孫の姿じゃない。
どんなに羽衣狐の言葉に動かされようとも、狐の孫は狐の孫らしくあるべきだと思う。


四百年前になにがあったかは知らない。
だから奴良組と陰陽師が関わってくるなんて思ってもみなかったけど、私の計画は絶対に狂わない。




「鬼童丸、私は百紅のところに行く。その人…いや、妖大事にしないとダメだよ」

「……なんのことですか?」




全く気付いてない、ね。
そもそもがなんとなく、で言ったのだけれど。
私が彼女に感じた“似てる”っていうのは、彼女も私も幽霊だと思う。
………今彼女が幽霊だとは限らないけどね。


これから私はどうしたらいいかというと、ただ百紅の元に戻ればいいだけ。
羽衣狐が百紅に憑いた途端私が追い出されたんだから、その逆もしかり。
それに私が力を抜けば、百紅の元からは離れられなくなる。


羽衣狐は、依代から追い出される。


その後はいくつかの計画の選択肢から選んでいけばなんとかなる。
父上が………私が、輝ける時代がくる。
百紅には悪いかもしれないけど、きっとそのうち気付いてくれる。
同じ妖なんだから、拒絶なんてあり得ない。

いざとなれば、この身体を完全に支配してでも父上の協力をしたい。
大好きな父上は、陰と陽が入り混じった世界を愛していた。
今は光が強すぎる。


父上、父上は今でも、そういう世界が好きですよね?



憧れの妖

( そうじゃないっていうのはもう判ってる。ただの現実逃避なの )
( でもこの気持ちは、百紅が羽衣狐を思う気持ちにちょっと似てるね )




◎サブヒロイン化してきた晴明の娘(^p^)
20121214



 

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