狐の孫 | ナノ

狐の孫

31.私の存在

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彼女の問題に私は関係ない。
だからあくまで見守るつもりだった。

でも、彼女は私を知らないんだから教えてあげないと。

私の存在を。彼女の存在を。
葛の葉なんて名の知れた妖に、私たち孫はそう簡単に勝てるわけないんだから。




 * * *




「久しいね、鬼童丸」




私が知っている鬼童丸より老いた気がするけど、千年と経っていたら仕方がない。
気になるのは鬼童丸の外見なんかじゃなくて、抱えている女の人。

なぜか、私と似ている気がする。




「その人は、羽衣狐の依代?」

「……なぜ…貴方様が…」




私の話なんて、聞くつもりもないらしい。

それもそうだとは思う。
私は藤原氏が権力を維持していた時代に死んでいる。
私が存在していることが、まず可笑しい。




「気配を感じて地獄から甦ってきた…かな」

「気配………とは?」

「父上の復活と、私が生まれたこと」




………私は今、実体を持っていない。
幽霊、という妖に分類されるのだと思う。

私は、狐の孫が生まれる度に幽霊となって復活する。
それは、2人目の狐の孫…つまり百紅が生まれて判ったこと。

そしてもう1つ、判ったことがある。
私は狐の孫を依代とすることができる。
逆に、私は彼女に縛られてる。
あまり離れたら頭痛や目眩などを引き起こすし、なにも意識していなかったらただ彼女の中にいた。

彼女の見ているものを見て、彼女の聞いてるものを聞いて、彼女の心を知っている。
だからこそ、私は羽衣狐から彼女を守りたい。


でも………




「私、父上の復活は止めないよ」

「それで…いいのですか?百紅様は………」

「…そうだね。百紅は父上の復活を認めない。でも私は父上が好き」




今本音を漏らすことはしないけど、あわよくば彼女を父上に服従させたい。
この野望を叶えるためには、まず羽衣狐を身体から追い出さなきゃいけない。

それに、彼女の時間ももうない。




「とりあえず、その人渡してくれる?今羽衣狐が居なくなっても父上に差し障りはないの」

「………」

「鬼童丸。貴方が仕えたいのは羽衣狐じゃなくて父上でしょ?」




わざわざ言う必要は、ない。
鬼童丸は昔からそうだったんだから。
父上に忠実で、少し違う言い方をすれば過保護。

百紅のことは気に入ってくれてる。
でも、羽衣狐に仕えてるのは辛かったんだろうな。




「…一応これでも羽衣狐に対しての顔がたつようにしてるんだけどな」

「?」

「普通に追い出したら羽衣狐は存在が危うくなるよ」




困惑の色が見えた。

そうだよ、鬼童丸。
そのまま渡してくれれば全てが上手くいくんだから。





私の存在

( 父上が復活しても、死なせてなんかあげないよ? )




◎千が言ってた晴明の娘!!やっと登場させられた(^O^)
20120525




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