狐の孫 | ナノ

狐の孫

28.伝えられない

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「百紅も来てくれたのか」




お姉さまの声が頭の中に響く。
私にとって、お姉様は毒なんだと思う。

だって私は、お姉様に逆らえない。
意思と身体が違う動きをする。


だって、ほら。




「百紅、こちらへ来い…さすが妾の孫、忠実よのぅ」




…………狐の孫ってなに?
自分の意思も尊重できない妖怪って、人間以下だよ。

いや…妖怪に基本的妖権の尊重とかは、ない。
でもやっぱりおかしいよ。

千や氷麗ちゃんが私の手をとってくれるけど、それを振り払う。
でも狂骨ちゃんが私の手をとると、私の身体は動かなくなった。




「今から行きます!お姉様」

「待て」




鬼童丸だ。
狂骨ちゃんは鬼童丸を見て、不思議そうな顔をした。

私だって、同じだよ。
鬼童丸のしたいことが、判らない。
ずっと一緒に居たのに皮肉でしかない。




「百紅様、行きますよ」




ふわりと身体が浮く。

呑気なこと考えてる余裕はないのに、懐かしいって思った。
小さい頃、鬼童丸には姫抱きとか負んぶとかしてもらって甘えてた。
6歳を過ぎたときにはしてなかったけど、今改めてしてもらうと落ち着く。

やっぱり私は異質。
鬼童丸は敵なのに落ち着くなんてただのワガママ。




「死なないでください」




鬼童丸が小さくそう言った。




「晴明様が生まれても、なにがあっても。百紅様が死ぬ必要などございません」




……なんだか悔しいなぁ。私は判らなかったのに。
鬼童丸は私の一番の理解者なんだ。

千みたいな私絶対ではないけど、私の心境を判ってくれる。
味方ではない私に気を遣ってくれてる。
私のことを……


小さいときから、ずっと大切にしてくれた。




『……死なない、とは言いきれない。だって、おじ様も私も1度死んでるはずだから』

「百紅様は初めてです、外の世界に触れたのは」

『でも、流産した子はもう生まれてこないよ』

「………」




もっとゆっくり話したかった。
こんなお礼の仕方、失礼って判ってるのに。




『ありがとう』

「!?」

『私は、鬼童丸のことお父様だと思ってるよ』

「百紅…様……」




鬼童丸と2人で話せるのも最後かもしれない。
でも…そろそろ気を引き締めなきゃ。


お姉様の口角が徐々に上がる。


お姉様…、私はお姉様を止めたいです。
無理だってことは判ってます。

だからお姉様…それなら私を殺してください。

本当は私もおじ様も死ぬのが道理。でも私は生きたい。
だからおじ様の復活は、許しません。


私で…最後にしましょう?お姉様……。






伝えられない

( 鬼童丸にはちゃんと感謝を言えなかった )
( お姉様を止めれる自信もない )

( 思い通りには、いかない )




◎今更ながら誰落ちだこれ。
20120220




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