狐の孫
▼26.未発達の恐れ
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「狐の孫…か」
そう言った鬼童丸の顔が悲しそうな表情をした。
私は、気付かないフリをする。
そうでもしないと、私は鬼童丸と戦うなんて無理だから。
「豊臣さん!!」
『氷麗ちゃん!今はリクオ君と鬼童丸が?』
「はい。豊臣さんは…」
『……私は奴良組の味方をするよ。なんとかお姉様を説得したいけど…きっと駄目だから』
「そうですか…」
お姉様の血が通ってるからかな。わかるの。
お姉様が苦しんでるのも、もうすぐ出産なのも。
お姉様が……凄く喜んでるのも。
もうすぐ息子を産めると喜んでるお姉様を説得しようと考えていたのが全て否定される。
そのくらい、お姉様の意思は堅くて強い。
『私は、鵺の存在を否定できない。私も同じだから』
「豊臣さん…?」
『だから都合いいかもしれないけど、私で最後にしたい』
言ってる意味がわからない。
私がわからないんだから、氷麗ちゃんがわかったら凄いと思う。
鬼童丸は、私が思っている以上に強かった。
でもリクオ君も負けてない。
なんでかは判らないけど、今のリクオ君はいつもと違う。
「気になりますか?リクオ様の業」
『業…?』
「畏れを背負ってるんです、リクオ様が」
『畏れを背負う…。つまり、あの刃物はリクオ君とはまた別の畏れ?』
「さすが豊臣さん!理解が早いですね」
妖怪の定義からは外れる気がする。
千いわく、妖怪はその妖怪特有の畏れを放つはず。
リクオ君は昼と夜で全然違うから人間の血も混じってる?
そしたら、定義なんて関係ないし、最強と言われてる鵺も父は人間。
人間と妖怪の間に生まれた妖怪…。
『それって、人間と妖怪の血が流れてるからできること?』
「……豊臣さんってやっぱり凄いですね。捕捉ですが、百鬼の主ができる業らしいですよ」
百鬼…。じゃあ私には無理かな。
鵺は確か陰陽術を駆使した妖。
ゆらちゃんの先祖…には当たらないと思うけど、ゆらちゃんみたいな能力が使えたんだと思う。
私はおじ様みたいになることもリクオ君みたいになることもできない。
「豊臣さんあんた妖怪やったん!?」
『ゆらちゃん…!隣の人秀元さんだよね?きっと私より詳しいと思う』
「千姫の娘さんやんな?またえらい可愛い子やなぁ」
…ゆらちゃんに説明する気はないみたい。
花開院秀元…封印を施した天才陰陽師。
この人の封印で羽衣狐も私の妖力も封印された。
『千、奴良組の状況はなんとなく判った。京妖怪に関してはまだよく判らないけど…千はどう思う?』
「難しいですね、若頭は見るかぎり初代よりお強い。しかしながら羽衣狐様も400年前より強くなっておられます」
『…私たちが加わってなにか変わる?』
「お嬢様に関してはまだ戦闘をなされたことがないので…」
返答に困る。実際私は力になれない。
それが、千の言葉ではっきりする。
『(私の畏れ…狐の孫以外になにか…)』
たくさんの花の名前が頭に過った気がした。
未発達の畏れ
◎一番最初のタイトルは恐れで合ってると…思う(^^;
20120123
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