狐の孫
▼23.味方を決めるのは自分
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揺れた黒い池と、気圧される京妖怪たち。
「百紅が逃げた…だと?」
怒りを露にする羽衣狐は、恐ろしいことこの上ない。
百紅と千が逃げた話は、すぐ羽衣狐の耳へと入った。
だがその百紅たちを連れ戻すすべを、羽衣狐は持っていない。
探そうと思えばすぐに見つかるのだろう。しかしだ。
彼女はこの場を離れるわけにはいかない。
「…百紅たちを捜し出せ。百紅が居るだけで…奴良組とは随分やりやすくなるからのぅ…」
羽衣狐は薄く笑ってから、愛しいややがいる己の腹を撫でた。
* * *
とりあえず、リクオ君を探そうということになった。
私はもしかしたら……もうリクオ君に会えなくなるかもしれないから。
もし此処で京妖怪に捕まったら終わりだと思ってる。
リクオ君は…どこ?
『!!!』
「どうかなされましたか?」
『凄い妖怪の数…あれ……奴良組みたい…』
奴良組のことは知らない。
でも先頭にいるのは、間違いなく清継君の好きな妖怪。隣には氷麗ちゃん。
やっと会えた。
『行こう…千』
「ですがお嬢様…」
『大丈夫、リクオ君なら…判ってくれる』
私と千は、移動のスピードが速い。
リクオ君に追い付くのはあっという間だった。
「何奴!?」
奴良組の妖怪が騒ぐ。
京妖怪に見付からないように顔を隠してたけど…それももう、いらない。
『久しぶり、リクオ君、氷麗ちゃん…。百紅です』
「「!?」」
リクオ君と氷麗ちゃんは、凄く驚いてる。
それはそうだよね。どこから見たって今の私は…。
狐でしかないんだから。
「百紅…?お前…」
『私の妖気は…花開院の人に封印されてたの。私は……羽衣狐の孫だし京妖怪と戦いたくない。でも…リクオ君とも戦いたくない』
お姉様が悪いことしてるとか、奴良組が悪いことしてるとか、よく判らない。
だから私はどっちにもつかない。ちゃんと解ったとき、私は私が思う正しい方に協力する。
ズルいかもしれないけど…。私はまだ解ってない。
妖怪のことも奴良組も京妖怪も。
『でももし私がお祖母様について奴良組と戦うことになったら…容赦なく殺してね』
「お嬢様!!!」
『大丈夫だよ、千。…私は妖怪が判らないからどっちが正しいのか知らないしお祖母様のしてることも知らない。だから味方は自分で決めるの』
だから…千は一番最初の私の味方。私が選んだ、大事な味方。
千はずっと私の隣に居てくれるはず。
……私はこれを言いに来ただけじゃない。
『…奴良組から誰か1人…貸して欲しいの』
「は?」
『大事なときにごめん、リクオ君。でも羽衣狐側に居た千だけの話じゃ偏るから…』
言い方が曖昧だったかもしれない。
でもリクオ君は判ってくれたらしい。
「あっちの方に妖気を感じねーか?」
『小さい…3人?京妖怪じゃない』
「あいつらに聞け」
『ありがとね』
1回、リクオ君を見てにっこり笑ってから、また顔を隠した。
早くしないと…。
もうすぐお姉様と奴良組が衝突する。
『行こっか、千』
「はい!!」
味方を決めるのは自分
( 百紅…凄い妖気だったな )
( リクオ様!私は…豊臣さんと戦いたくありません!! )
( あぁ… )
◎したいことはあるけどクライマックス謎。わー…
20111220
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