狐の孫
▼19.昔の話
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「そんなに驚くでない。昔の話をしよう」
『昔の…話?』
「お前が命を授かった…400年くらい前かのう…」
* * *
妾が淀君の身体に身を潜めていたときじゃ。
2人の子を授かったがどちらも女子ではなかった。
妾は所詮女狐。妖怪の本質を子孫に残すことができないでおった。
…晴明も素晴らしい能力を得たが……狐の姿になることはなかった。
そんなある日、秀頼の夫婦である千姫から妖気を感じた。
「千姫…何かあったか?」
「今母上に報告をしようと参ったまでにございます」
「申してみよ」
「子を…授かりましてございます」
それが百紅じゃった。
感じる妖気は凄まじく、隣にいた鬼童丸からも驚きを伺えた。
…奴は晴明の一番近くにおった。並大抵の妖気などに一々驚く奴ではないことは知っておる。
理由はそれだけだが妾は確信した。
生まれるややは女子で…強い妖気を持っていると。
そして疑問も生まれた。
その強い妖気を持ったややを…ただの人間が産めるか?
「無理……であろうな」
「?…何がですか?」
「こちらの話じゃ。丈夫なややを産んでくれ」
「はい!!」
どうしようかと迷った。子を産んだと同時に母に死なれても困る。
一応姪でもある。死んだら江という人間に怒鳴られるであろう。
「…そうじゃ……鬼童丸…」
「なんでしょう…淀の方様」
「反魂の術を…晴明はやってくれぬかのう……千姫にもあのややにも…。
ややには未来に生まれてもらおうではないか。ややを産めるのは母だけであろう?
その時千姫が死んでも問題なかろう」
「…………良い考えでございますね」
未来が楽しみでしょうがのうなった。その前に晴明を生まねばな…。
それから千姫はややを流産した。
* * *
『(あれ…?)』
今の話だけだと、絶対可笑しい。
だって私は……人間なんだから。
『質問…していいですか?』
「申してみよ」
『私は今…ただの人間です』
「あぁ…ある陰陽師にお前のことを感付かれてな。百紅の妖気は封印されてしもうた。
今我らはその封印を解こうとしておるとこじゃ………もう少しで…」
その先は言わなくても判った。
もうすぐ私は…妖怪になる。
『お姉様…いえ、お祖母様…』
「お姉様で良い。この容姿ではな」
『お姉様……私はこれから…………』
どうすればいいですか?
答えなんて…簡単に出ない。
覚悟はしてた。勿論。
でもそれ以上だった。
お姉様はお祖母様で…。私は戦国時代と江戸時代の境目頃に生まれる予定で……。
ちょうど豊臣秀吉が祖父に当たる。
………………なんでこんなこと冷静に考えてるんだろう。
「大丈夫じゃ、妾に身を委ねてみよ。祖母を信じてはくれぬか?」
『いえ、そんなこと…』
「可愛い孫をもった。
とりあえずは…封印が溶けるまで妖弧と部屋に居れ。」
『はい…』
…これから私はどうなるんだろう。
昔の話
( …鬼童丸どうしたの? )
( あまりにも落ち着いてましたので )
( 私は、お姉様に身を任せるって決めたの )
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20111101
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