狐の孫 | ナノ

狐の孫

18.笑う

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「帰ってこられましたよ」


『…判った』




これから私は何を言われるんだろう。



人間じゃなくて妖怪だ。
なんて…言われると判ってても言わないで欲しい。



私はずっと…人間のつもりだったから。



お姉様は大好き。
でも、私はお姉様の妹じゃないって言ってもらえた方がマシな気がする。
似てない理由にもなるから。
私は妖怪じゃないって…そういうことになるから。




「失礼します、百紅様」


『鬼童丸…』


「積もる話はありますが、今はお姉様とお話ください」


『判った。ありがとう、鬼童丸。それから…』




鬼童丸は本当は…羽衣狐様って呼んでるんだよね?
妖弧だってそうだもん。



私は鬼童丸に無理してほしくない。




『お姉様じゃなくて…羽衣狐様でいいよ?』


「!?」


『気、遣わなくていいから』


「…それでは羽衣狐様の所へ行きましょう。妖弧は部屋の掃除を」


「畏まりました」




…ずっとベッドの上にいたから掃除なんて必要ないのに。



わざわざごめんね、妖弧のことも大好き…だよ。



部屋を出たら、見たことのない長い廊下。
この屋敷、こんなに大きかったんだ。




「…立派になられましたね」


『え?』


「久しくなりますが…変わりました、百紅様は。羽衣狐様に似ています」


『…そっか』




やっぱり姉妹…なんだよね。



外見が似てなくても、やっぱり中身は似てるんだ。




「此方です」


『ありがとう』




では、と言って鬼童丸はドアの横に立った。
部屋の中までは行かないらしい。



久しぶりに…お姉様に会うんだ。




『失礼します』


「待ってたわ、百紅。その椅子に座って」




テラスに丸いテーブルと椅子が2つ。
向かい合うように置いてある。
片方には既にお姉様が座ってる…。



…今更になって…逃げたい…よ。



でもそんなワガママ、言ってられない。
言われた通りに、椅子に座った。




「百紅には…全てを話さねばならぬな」


『!?』




口調がお姉様じゃない!
これが…本当のお姉様…?



私はやっぱり何も知らなかった。
お姉様すら…知らなかった…。




「…姉が怖いか?」


『いいえ…』


「そうか。しかし少し間違えた」




間違えたって何を?
何も…間違えてないよ。




「祖母が怖いか」


『!?』










笑う

(悪戯がばれた子供のように)

(お姉様は)

(笑った)




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2011.10.30




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