狐の孫
▼18.笑う
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「帰ってこられましたよ」
『…判った』
これから私は何を言われるんだろう。
人間じゃなくて妖怪だ。
なんて…言われると判ってても言わないで欲しい。
私はずっと…人間のつもりだったから。
お姉様は大好き。
でも、私はお姉様の妹じゃないって言ってもらえた方がマシな気がする。
似てない理由にもなるから。
私は妖怪じゃないって…そういうことになるから。
「失礼します、百紅様」
『鬼童丸…』
「積もる話はありますが、今はお姉様とお話ください」
『判った。ありがとう、鬼童丸。それから…』
鬼童丸は本当は…羽衣狐様って呼んでるんだよね?
妖弧だってそうだもん。
私は鬼童丸に無理してほしくない。
『お姉様じゃなくて…羽衣狐様でいいよ?』
「!?」
『気、遣わなくていいから』
「…それでは羽衣狐様の所へ行きましょう。妖弧は部屋の掃除を」
「畏まりました」
…ずっとベッドの上にいたから掃除なんて必要ないのに。
わざわざごめんね、妖弧のことも大好き…だよ。
部屋を出たら、見たことのない長い廊下。
この屋敷、こんなに大きかったんだ。
「…立派になられましたね」
『え?』
「久しくなりますが…変わりました、百紅様は。羽衣狐様に似ています」
『…そっか』
やっぱり姉妹…なんだよね。
外見が似てなくても、やっぱり中身は似てるんだ。
「此方です」
『ありがとう』
では、と言って鬼童丸はドアの横に立った。
部屋の中までは行かないらしい。
久しぶりに…お姉様に会うんだ。
『失礼します』
「待ってたわ、百紅。その椅子に座って」
テラスに丸いテーブルと椅子が2つ。
向かい合うように置いてある。
片方には既にお姉様が座ってる…。
…今更になって…逃げたい…よ。
でもそんなワガママ、言ってられない。
言われた通りに、椅子に座った。
「百紅には…全てを話さねばならぬな」
『!?』
口調がお姉様じゃない!
これが…本当のお姉様…?
私はやっぱり何も知らなかった。
お姉様すら…知らなかった…。
「…姉が怖いか?」
『いいえ…』
「そうか。しかし少し間違えた」
間違えたって何を?
何も…間違えてないよ。
「祖母が怖いか」
『!?』
笑う
(悪戯がばれた子供のように)
(お姉様は)
(笑った)
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2011.10.30
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