狐の孫
▼17.届かない謝罪
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「久しぶりだな、百紅」
そう言いながら女狐は百紅の頬を撫でた。
反応はない。
「今からまた封印を解きに行くでな。封印が解けたとき、お主は真の姿になるであろう」
妖しく笑う。
その中に、少し楽しそうな表情。
「行くぞ。封印を解きに」
「羽衣狐様!私は…」
「妖弧は百紅の傍に居れ。目が覚めても何も言うでないぞ。面白うなくなる」
畏まりました、と伏せがちに妖弧は言った。
それから小さく、それでも真の通った声で
「百紅様は必ず私が守ります」
と告げた。
女狐は薄く笑った。
* * *
『…ん……』
夢を見た。
私には理解出来ない、そんな夢。
あの優しいリクオ君に、睨まれた。
氷麗ちゃんにも。
でも、きっと、ただの夢だから。
「悲しい夢でも見たのですか?」
『妖弧…』
「泣いておられますよ」
言われてみたら、なんとなく目尻が冷たい気がする。
私は今まで“友達”を知らなかったから…。
友達に裏切られるのが怖い。
とてつもなく。
でも…。
知らない間に裏切ってたらどうしよう。
もし本当に、私が妖怪だったら…。
それを皆に隠して…騙してたって…。
そういうことになる?
「…難しいことは考えない方がいいですよ」
『…なんで?』
「全て…羽衣狐様が教えてくださいます。それを受けとめる為に、今は無理しないで下さい。
私からのお願いです」
『…わかった』
…お姉様はきっと妖怪。
私も…。
覚悟してないと受け止められない話。
妖弧が言いたいのはそういうことでしょ?
何を言われようと、私は私だから…。
ごめんね、皆。
届かない謝罪
(それでも届いて欲しいと願う)
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20111029
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