狐の孫 | ナノ

狐の孫

17.届かない謝罪

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「久しぶりだな、百紅」




そう言いながら女狐は百紅の頬を撫でた。



反応はない。




「今からまた封印を解きに行くでな。封印が解けたとき、お主は真の姿になるであろう」




妖しく笑う。
その中に、少し楽しそうな表情。




「行くぞ。封印を解きに」


「羽衣狐様!私は…」


「妖弧は百紅の傍に居れ。目が覚めても何も言うでないぞ。面白うなくなる」




畏まりました、と伏せがちに妖弧は言った。



それから小さく、それでも真の通った声で




「百紅様は必ず私が守ります」




と告げた。



女狐は薄く笑った。




 * * *




『…ん……』




夢を見た。
私には理解出来ない、そんな夢。



あの優しいリクオ君に、睨まれた。
氷麗ちゃんにも。



でも、きっと、ただの夢だから。




「悲しい夢でも見たのですか?」


『妖弧…』


「泣いておられますよ」




言われてみたら、なんとなく目尻が冷たい気がする。


私は今まで“友達”を知らなかったから…。
友達に裏切られるのが怖い。
とてつもなく。



でも…。
知らない間に裏切ってたらどうしよう。



もし本当に、私が妖怪だったら…。
それを皆に隠して…騙してたって…。
そういうことになる?




「…難しいことは考えない方がいいですよ」


『…なんで?』


「全て…羽衣狐様が教えてくださいます。それを受けとめる為に、今は無理しないで下さい。
私からのお願いです」


『…わかった』




…お姉様はきっと妖怪。
私も…。



覚悟してないと受け止められない話。
妖弧が言いたいのはそういうことでしょ?



何を言われようと、私は私だから…。



ごめんね、皆。










届かない謝罪

(それでも届いて欲しいと願う)




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20111029




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