守り神
▼60.記憶の矛盾
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魔王召喚。
あの妖刀に書いてあった文字。あれは……
『魔王の…小槌……』
自分の声で目が覚めた。
魔王の小槌ってなんだろう。なんでそんなの知ってるんだろう。
妖刀なんて全く興味ない。
それともまた神としての能力かなんかか…。
「魔王の小槌を知っているのか」
『牛鬼…。狸野郎が持ってた刀。魔王召喚って書いてあったから多分…』
魔王召喚。そのままの意味と捉えて良いのか。
そうだとしたら、あれは厄介だと思う。
魔王の定義は曖昧だけど、少なくとも危ない何か。
「葵先輩!!お目覚めになりましたか!!」
「良かった…ぜよ…」
「葵は助けられる側だろ今回…」
氷麗ちゃん、犬神、リクオ…。ごめん。
今回は普通に迷惑かけた気がする。
それと、なんでいるんですか?
「無理するなと言ったばかりだろう!!」
『いや桜様ごめんなさいこれには訳が』
「問答無用!!」
『あー!!えーと…あ、あれ、桜の枝が折れそう…?』
「嘘を言うな嘘を。まぁ倒れるだけで済んだから良かったけど…。無理するんじゃないよ」
『…はい』
私のことなんかすぐ判るんだろうな、桜様は。
保護者だもんね、心配もしたくなるでしょ。
それもちゃんと判ってたのに。
『ごめんなさい…』
「もう良い。これからの態度で示せ」
『努力します』
「“はい”じゃないんだな…」
当たり前じゃないですか桜様。
私はそんな出来た奴じゃないから無理します。それ前提。
だから強くなることを決めた。
『それから桜様…私妖怪の喧嘩に首突っ込むの今回で最後にします』
「そうか」「「「はぁぁぁ!?」」」
痛い。声の音量が痛い。
そんなに驚かれるとは私考えてもみなかったよ。
でも決めたから。よほどのことがない限り関わらない。
だって人間と神ではあるけど…妖怪じゃないから。
『土地神のことは今でも許せない。でも奴良組が倒してくれるでしょ』
「簡単に言うなよ」
『危ないときは助ける、ちゃんと。でも大丈夫だと判断すれば何もしないから』
なら良いやとか言ってる小妖怪ども。
助けられればそれでいいんだね。
強くなるとか…考えれば奴良組の組としての価値はもっと大きくなるんだろうな。
『魔王の……小槌…』
「気になるのか?」
『知らないんですよ、そんな刀。なんで名前を知ってたのか…それが判らない』
そう言った私に、無理のし過ぎだとだけ言って桜様は姿を消した。
記憶の矛盾
( 知らないはずなのに… )
◎神様っぽい能力だといいなとか目論む管理人。
20120227
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