守り神 | ナノ

守り神

51.ややこしい

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リクオの祖父が去ったあと、部屋は静かだった。



この家に話し掛けても返事なし。
大事にはされてると思うんだけどな。
口が固いみたい。




『リクオ、お願いだから早く入ってよ』




少し沈黙があって、ゆっくりとあく襖。




「お前、危なくねーか?」


『は?』


「酷く曖昧にしか感じれねぇ」


『だろうねー…。でも大丈夫だから。まず犬神が先』




…なんか可愛い。
リクオと犬神がお互いに遠慮してんだけど。
オドオド感が凄いよ!!



犬神はともかく…。
リクオがきょどってるとか全力で笑っていい?




「…なにニヤついてんだ?」




返答しようとして無視決めた。
肯定したくない。




『犬神、決心はついたよね?』


「…勿論ぜよ、俺は…」


『言わなくていい。犬神が私のこと信頼してるの…感じてるの』




昼間は憎悪で溢れてた。
その犬神をこんなに変えられるほど何かしたっけ。



狸と離れたから…って理由にしときたい。
あの狸はきっと、周りに影響及ぼすだけの力を持ってるから。




『…それじゃあ保護者にでも会いに行こうかな。色々聞きたいこともあるし』


「こっちだ」


『いつもありがとね、リクオ』




これからが勝負ってことで。



そういえば、犬神しか想い感じることできないかな。
桜様とか判ったらいいのに。
リクオでもいいから判ったら…



思いっきりいじれるのに。



「…なに笑ってんだよ」




さっきもこんなのあったし。
私はやっぱりリクオを馬鹿にしたくて仕方がないんだ。




『別に。ただなんというかリクオってねぇ…』


「なんだよ」


『ねぇ?犬神?』


「そ…そうぜよ」


「意味わかんねー」




そんな馬鹿っぽい話をして。



桜の木の下まで来た。
叫ぼうとして、やめた。
神化はしてないのにいつもより力が強い気がする。



桜様。
来てください。




「!?」


『犬神も神気を感じるんだ』


「神気…これが?畏れにしか感じないぜよ…」




畏れ。
そういえばいつだか“畏れ”の戦いだって聞いたな、妖怪は。



でも…この神気は違う。
いつもの桜様じゃない。



ぽぅっと現れた桜様。



あたし…なんかしたっけ。
凄い睨まれてない…?




「葵…無理しすぎだ」


『…やっぱりそうですか』


「やっぱりの意味判ってんのか」




意味は判ってますよ流石に。
ただ何がやっぱりなのか判らない。



ふるふると首を振ると桜様は、はぁ…と溜め息をついた。




「説明は後だ。
“神々に申す。一時的に我らの主との繋がりを途絶えよ”」


『んっっ…!』




今まで少し浮遊感があって、いきなりズドンと落とされた感じ。
魂が戻ったってこと?




「今…お前は神になれない」


『…へぇ』


「曖昧な返事をするな。
となかくだ。お前は力を使い過ぎて今の体じゃ耐えられなくなった。だから…神になりかけた」




なりかけた…?



私が使った力は…人間の私が受けとめられる力じゃなかった。
だから私は…人間を捨てかけた…か。




「…力を求めたいのならいつだかの…牛若丸…と言ったか?あの時のように力を貸してくれる神を探せ。
私や苔姫もお前に力を貸してるのを知ってるだろう?
そうしてくれる神々はきっと少なくない。まぁお前と会ってないと力を貸すことは不可能だが。
その神が望もうと」




私はもっと強くなれる…ってことか。
求めれば。
そう促すってことは桜様は私が強くなることを望んでいる。



桜様には感謝しきれない。
私に沢山のことを教えてくれたから。
だから…強くなる。




『私…強くなります』


「そうか、ところで…若頭の横にいる妖怪は?どうやら盃は交わしてないようだな」




忘れてた。









ややこしい

(それより桜様、もっと話を簡潔にしてください)
(やかましい!!!)




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20111022




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