守り神
▼50.ズレてる
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妖気がたくさん溢れてる。
こんなとこ、1つしか知らない。
『リクオ君…』
「リクオな」
あ、もう夜なんだ。
やっぱ力使い過ぎた。
神化できる気がしない。
『犬神は…此処から北に4メートル、東に10メートルってとこ?』
「…さすがだな」
『よっしゃ』
感覚だけは鈍ってない。
寧ろ研ぎ澄まされてる感じ。
『…まぁ…いいや。犬神連れてきてよ』
「わーったよ」
なんかあたし変。
自分が自分じゃないみたい。
『なんの用ですか』
「ほぅ、このぬらりひょんの畏れを見抜くか。お嬢ちゃん」
『…リクオの親?』
襖の後ろに妖気がした。
とても小さいけど。
見た目は…なんか妖しい感じ。
妖怪だから当たり前か。
でも、雰囲気がリクオそっくり。
いつだかの牛鬼と梅若丸様みたい。
「リクオの祖父じゃ。体の調子はどうじゃい?」
『え?』
「身体と精神がズレてる気がしてな」
あぁ、それで。
『変な感じはしてたんですけど…ずれ…』
なんでだろう。
昼間力使い過ぎたから?
それともただ単に時が来ただけ?
私には何が起こるか判らないから。
「どーせ桜ノ神に会うんじゃろ?そのときにでも聞け」
『はぁ…』
ずれ。
小さく言ってみた。
これって冷静に考えたら肉体と魂がずれてるってことでしょ。
なのに全く怖くない。
逆に普通な気がして。
大丈夫だと思った。
私がそう思ったんだから、やっぱり大丈夫なんだと思う。
「守り神…きっと大変なことがあるじゃろうな。わしは色々お前さんに教えることができんが…。
精々頑張れ」
『…はい』
ズレてる
◎111009
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