守り神
▼30.嫌いじゃない
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神気が結界になって守ってくれる。
だから大丈夫。
でもこういうのってやっぱり恐い。
───キーン…
『え?』
確かに、私に刀が触れることはなかった。
でも守ったのは神気じゃない。
「なぜ止める…?」
「こいつが言ってるのはお前の問題なんじゃないのかい、牛鬼」
火事の妖怪…。
あれ、なんかカジノ妖怪みたい。
まぁいっか。
『ありがと…。牛鬼。貴方こんな反乱起こしといてまだ…迷ってるでしょ。
これで良かったのかどうなのか。それを梅若丸様も悲しく思っておられる…』
「…本当に神なのか?」
色々言い当てたっぽい。
なんか凄いきょとん顔。
『そうだって「こいつはちゃんとした神だ」…桜様?』
凄くいい笑顔を私たちに向けてきた。
「桜ノ神…様ですか!?」
牛鬼から敬語が出た。
私には遣わなかったし。
てゆうか信用されてなかったし。
「久しぶりだな、牛鬼。守り神は私たち神にとって今や、一番大切な存在なんだ。
守りを敵にしたら…私は勿論苔姫なども敵に回すだろう。」
いつから貴方は私を守りと呼ぶようになりましたか。
自分勝手にも程がある。
明らか桜様のが凄い神だけど…梅若丸様を見習ってほしいよ。
「牛鬼!何をしている!?」
新たに妖怪が来る。
妖怪に関わるなって言ってた桜様ば全力で牛鬼と知り合いだよね。
「奴良組の若造が来るな。古株と関わるのはいいが…。新たに妖怪と顔見知りになるのは気が引ける。
こっちは帰らせてもらうよ。奴良組若頭は桜の上にあんまり乗ってくれるなよ」
桜様は消えた。
いや、消えてない。
神気がある…!
今すぐ追いかけなきゃいけない気がする。
でも私にはまだやらなきゃいけないことが。
『妖怪には普通の神も見える。だから貴方は梅若丸の祠に行くべき。
出来るならすぐに…』
ってその体じゃ無理だよね。
だから願う。
牛鬼とカジノ妖怪の傷が治るようにって。
真っ白い眩しい光。
彼らが目を瞑っている間に屋敷から私は出た。
きっと傷は大丈夫。
とりあえず。
『桜様はどうしてここに?』
「なぜ?さっき牛鬼が桜ノ神と言っただろう?それが私の正式名ってやつだ。
そんなもののお陰なのか桜がある場所には行ける。
拠点は祠だがな」
今桜様が寄りかかる木がそうみたい。
ちょっと羨ましいな、その能力。
『桜様…私…』
妖怪と関わって良かったのですか?
そう言いたかった。
でも言えなかった。
運命って割り切れてる自分もいたから。
「私はもう帰る。早く石を返せ」
『え?あ、ありがとうございました』
よく見ると凄く綺麗な石。
今まで毎日見てて全く気付かなかった。
「じゃあな。またあっちで」
私は何も言わなかった。
そっと笑った。
嫌いじゃない
(桜様って実は優しいよね)
(…聞こえてるぞ?)
(ひっ!!!)
◎4話合体
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