ひびの入った | ナノ

ひびの入った

31.お隣さん

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久しぶりの学校に疲れてない。…って言ったら嘘になるけど、それよりもスッキリしたのが勝ってて、プラマイゼロ。


誰も居ない家に帰って適当に夕食食べて、ボーっとしてた。
すると窓を叩く音。なんつーかベタだなとか思っても窓を開けるあたしはかなり良い子だと思う。
まぁ叩いた犯人は判りきってるんですけどね。




『お隣さんがあたしだからいいけど、普通窓叩くの恋人以上』

「幼なじみも可だろ」




ベタなのはあたしの脳内。
そんでもって、頭の出来が良くない…ストレートに馬鹿な阿伏兎に勉強教えるのは日常。

昨日までわざわざ阿伏兎が家まで来てくれたけど、窓からでも良かったのに。
律儀だなこいつ。




『どうしたの?』

「案外元気だな…心配してたんだがよ」

『相変わらず心配性だね。それなら自分の学力気にした方がいいのに』

「カーブでトゲが心に刺さった気がする」

『トゲなんて可愛いもの投げてない。どっちかっていうと槍』

「……」




毒舌に過ぎたっぽい。ストップ。
阿伏兎が微妙に涙目言い過ぎたかも。

でもそれを軽く受け流すのも阿伏兎の大人的部分だから流してくれる。はず。
流してくれなかったら真面目に謝らないと。




「…三つ編みと両思いになったんだってな」

『…なんで知ってるんですか?』

「昨日不安げに“両思いなんだよね?”とか言ってた」

『神威が!?へぇ意外』




そういう話があると、ちゃんと神威はあたしのこと好きなんだって安心する。
好きなんて口だけならいくらでも言える。本当も嘘も見分けがつかない。
だから、お母さんがたまに、本当に極たまに言ってた“和はできる子”なんて信じたことない。

おっと話が反れました。
とにかく、神威のことならあたしは信じれる。




「…いつの間に大きくなったんだか、和ちゃんは」

『はいはーい。同級生の男子に和ちゃんとか呼ばれるのまじキモいでーす』

「俺留年しただけでお前よりは…」

『ごめん阿伏兎、冗談冗談。もう高校生だよ?小学生のときと比べないでよ』




そーかそーかとか言いながら、頭を撫でる阿伏兎を誰かどうにかしてください。
木刀…いや、それは痛いから竹刀で一発…って空気でもないねこれ。

つーか「おじさん心配だったんだよ和ちゃんの将来…」って涙ぐみながら何言ってんの?
もしかして親戚のおじさん!?そしたら心配かけてごめんなさ…

ってそんなわけない。




『…あたしはもう大丈夫だよ』

「判ってる。だからって無理すんなよ、困ったら三つ編みか俺に言え」

『それこそ判ってる。ていうか涙腺緩んでるっしょ』

「うるせー」




なるべく阿伏兎には頼りたくない。
でも一番頼れるのは阿伏兎だよ。

なんて絶対言ってあげないけどね。






お隣さん

( もう留年しないでね、あたし先輩になっちゃう )
( …嫌なこと言うなよ )




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20120109




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