ひびの入った
▼30.集団の意味
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『私は…ここに来るまで…人として扱われなかった』
まぁ当たり前かもしれない。
だってあたしは“小学校二年生”にして両親と兄の意識を失わせたんだから。
世間から見ても要注意人物だったんだろう。
尚更、お母さんたちはあたしを突き放したくて…。仕方なかったはず。
『ド忘れってか覚えてたくないから名前は言わない。けど、未成年が暴力したら入るような施設に缶詰め』
あたしが1番若かったって言うと、阿伏兎が息を吐いた。
自嘲でしかなかったか。
でも実際、幼くても小5あたりで、あたしは10も生きてないチビだった。
当然、生意気だとか虐められた。
『ひどいよねー…女の子を寄ってたかって袋叩きとか』
「和は?」
『え?』
「和はどうしたの?」
『…………』
言っていいの…かな。
でも強くなりたいって言ったのあたしだからなぁ…。
あたしは、もう裏切りたくない。
『最初は…やっぱり男の子だし家族と違って喧嘩してる馬鹿ばっかだったから…。そりゃ負けたよあっさり』
それにあたしは剣術派。
ああいう施設で木刀とか竹刀とか持っていいわけないしね。
捨てないでくれたことには感謝してる。
今あたしが握ってるのは…師匠にもらった木刀だから。
『でもいつまでも負けてるわけにはいかないからねー…。確か小3になる前に小6までは倒せるようになった』
あたしには、剣術だけじゃない。空手を教えてくれた人もいる。
その人が施設の管理人だった。
『管理人は、いくらあたしが小さくても女の子でも決して助けようとはしなかった。職務放棄だし。でも空手を教えてくれた』
そういう意味では、他のチンピラと格が違うと言っていいかもしれない。
だってあたしは、変にグーで殴ったりしない。木刀が無かったとしても空手。
剣道とか空手を喧嘩で遣うってその神経は狂ってるかもしれないけど。
『でもやっぱり…中学生には適わなかった。施設を出るまで…』
「施設出たのは中学生になったときだっけか?」
『そうだよ。だから私はわざわざ中学で剣道部入りながら空手習ったの。彼らに会ったとき、もう負けたくないから』
それは今だって変わらない。
彼らには、負けたくない。女だって強いんだって見せ付けてやりたい。
「渚嬢が1番辛かったのは…いつですか」
『んー?中学のとき。賢いからねあたし。賢い中学校で施設から出たあたしを受け入れてくれるわけないし』
暴力を奮ったらまた施設に戻される。
その一心で一度も暴力は奮わなかった。どんなに殴られても。
部活と空手のときは暴れてたけど。
あたしは、集英高校の推薦入学ができる学力はあったけど、しなかった。
暴れたかった、精一杯。
「それで今に至る…と?」
『そういうことになるかな』
沈黙が続く。
重いよ、やっぱり。でもスッキリした。
みんなに話せて、良かったと思う。
『長々喋っちゃってごめん!今日はもう解散で。それじゃあ…また明日…』
「「「おっす!!!」」」
みんなはあたしを差別したり見下したり…。過去を話したってあたしを見放したりしない。
だからあたしは見放したくない。
卒業するまではずっと一緒にいたい。多分あたしが夜兎工業を去ることはないけど。
あたしは、夜兎工業のみんなが好きだ。
集団の意味
◎ド忘れしたのは私です調べたのにwとりあえず…過去はこんなもん?
20111222
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