ひびの入った | ナノ

ひびの入った

28.小さな序章

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父と母、長男、長女の4人で構成されたその家族は平凡な家族だった。

昼間せっせと働く父。
仲良く遊ぶ長男と長女。それを見守る母。
それはどこの家庭でも見かけるような、ごく一般的な家庭だ。


しかし、それはただのコラージュに過ぎない。

家の中に入ると、たちまち少女の居場所はなくなる。
まるで、お前は家族ではないというように。

実際、エリートと唄われるような仕事や学力を身に付ける3人に比べ、少女は普通に、賢い程度だ。
一般的に見たらよく出来た子だったのだろう。
しかしその家族では賢くもなんともなかった。

それが両親は気に食わなかった。
我が家にこんな馬鹿な娘がいていいのか?いや…良くない。

その思いが膨らんで、やがて、弾けた。

まだ幼稚園に入学したばかりの子を、虐待し始めたのだ。


毎日のように貶され、殴られ、蹴られ…。
それに耐えられなかった娘は、度々公園に逃げるようになっていた。

最初は周りの親からは子供1人で来ているのに反感を買った。しかし、それもすぐ無となった。
この公園にはいつも誰かしらいるし、さすがに誰も居ないような時間には来ないだろうと。

しばらくは、他の親が思ったようそうだった。

しかし、自立心などを持ち初め、娘はどんどん苦しくなっていく。
夜だって、虐待の対象時間だ。

やがて娘は夜でさえも公園に行くようになった。年中になったばかりの4歳だ。

そんな夜、出会った男は銀色の髪をしていた。
月明かりに照らされ、キラキラと輝く、銀色の髪。

男は一心に竹刀を振り回す。
娘のことなど視界に入らない。だからこそ、娘はこの男に憧れた。


その男は、休みの日には昼間も公園に来るようになった。竹刀を振り回しに。
周りの親からしたら良い迷惑だが、此処は公園…公共施設だ。
流石に出ていけとは言えない。

生憎、この公園の周りには他にも公園があった。親たちは、1人、また1人と他の公園の常連となる。
公園に残ったのは銀色と娘の2人だけだった。


流石に、男も娘の存在に気付く。娘は自分を見ているのだと。

娘は飽きずに男を見ていた。男は、少しばかり気になった。




─「強くなりたいのか?」

─『…うん………!』




そうして、男は娘に教えはじめた。
剣のことや力のこと。そして、本当の意味の強いということ…。




 * * *




『このときまでは…狂ってなかった。ただ…本当の強さの意味……。幼かったあたしにはまだ判らなかった』

「狂う…?」

『そう…。あたしは、狂った』






小さな序章

( もう、あの時には戻れない )




◎過去過去過去!2番目に書きたかったとこ!(え)
20111212




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