ひびの入った
▼28.小さな序章
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父と母、長男、長女の4人で構成されたその家族は平凡な家族だった。
昼間せっせと働く父。
仲良く遊ぶ長男と長女。それを見守る母。
それはどこの家庭でも見かけるような、ごく一般的な家庭だ。
しかし、それはただのコラージュに過ぎない。
家の中に入ると、たちまち少女の居場所はなくなる。
まるで、お前は家族ではないというように。
実際、エリートと唄われるような仕事や学力を身に付ける3人に比べ、少女は普通に、賢い程度だ。
一般的に見たらよく出来た子だったのだろう。
しかしその家族では賢くもなんともなかった。
それが両親は気に食わなかった。
我が家にこんな馬鹿な娘がいていいのか?いや…良くない。
その思いが膨らんで、やがて、弾けた。
まだ幼稚園に入学したばかりの子を、虐待し始めたのだ。
毎日のように貶され、殴られ、蹴られ…。
それに耐えられなかった娘は、度々公園に逃げるようになっていた。
最初は周りの親からは子供1人で来ているのに反感を買った。しかし、それもすぐ無となった。
この公園にはいつも誰かしらいるし、さすがに誰も居ないような時間には来ないだろうと。
しばらくは、他の親が思ったようそうだった。
しかし、自立心などを持ち初め、娘はどんどん苦しくなっていく。
夜だって、虐待の対象時間だ。
やがて娘は夜でさえも公園に行くようになった。年中になったばかりの4歳だ。
そんな夜、出会った男は銀色の髪をしていた。
月明かりに照らされ、キラキラと輝く、銀色の髪。
男は一心に竹刀を振り回す。
娘のことなど視界に入らない。だからこそ、娘はこの男に憧れた。
その男は、休みの日には昼間も公園に来るようになった。竹刀を振り回しに。
周りの親からしたら良い迷惑だが、此処は公園…公共施設だ。
流石に出ていけとは言えない。
生憎、この公園の周りには他にも公園があった。親たちは、1人、また1人と他の公園の常連となる。
公園に残ったのは銀色と娘の2人だけだった。
流石に、男も娘の存在に気付く。娘は自分を見ているのだと。
娘は飽きずに男を見ていた。男は、少しばかり気になった。
─「強くなりたいのか?」
─『…うん………!』
そうして、男は娘に教えはじめた。
剣のことや力のこと。そして、本当の意味の強いということ…。
* * *
『このときまでは…狂ってなかった。ただ…本当の強さの意味……。幼かったあたしにはまだ判らなかった』
「狂う…?」
『そう…。あたしは、狂った』
小さな序章
( もう、あの時には戻れない )
◎過去過去過去!2番目に書きたかったとこ!(え)
20111212
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