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ひびの入った

25.強くなれる

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とりあえず、今の学校生活について話した。

すごく驚いてた。それでも「楽しそうだな」とかって言ってくれたのは、やっぱり師匠だから。
この人じゃなかったらもっと落胆される。




「そんで?」

『そん…で?』

「言ってねーの?昔のこととか、色々」

『あー…』




言おうとしたんですって話をした。


本当だったら、今頃話してるはずだった。
壊れて、狂って、痛みなんて感じないくらいに可笑しくなって…。そうなってから言いたかった。
なのにあたしは傷ついた。




「それじゃ意味ないだろ」

『え?』




はぁっと呆れたように師匠はため息をついた。
あたしは呆れらるた人っぽい。




「なんのために言うんだよ」

『もう…大好きなみんなに隠し事したくないから』

「壊れた状態なら…お前のその意志も曲がってんだろ」

『……』




知ってます師匠。あたしはズルい奴なんです。

隠し事したくないから言うと決めた。でも言ったら多分あたしが傷つく。
なら、あたしが傷つかない道を進もう。って。


神威はあたしのことを強いなんて言うけど、全然そんなんじゃない。それは神威だけじゃないけど。
強いって理由でもみんながあたしの傍に居てくれるのが嬉しくて…。
でもやっぱりあたしはズルい。

本当は強くなんかないのに。




「どうすんだ?」

『……明日学校行きます』

「うし、上出来だ」




ガシガシと頭を撫でられた。


女の子なんだから、ボサボサになっちゃうぐらい言ってもいいんだろうけど、嬉しいから言わない。
師匠に撫でられるのが嬉しくてしょうがないんだ。昔と同じように。




「…和、安心しろ」

『え?』

「俺も先生なんざ背負えねー」

『…師匠にも……そういう人がいるんですか?』

「あぁ、死んじまったけどな」

『……』




また、空を仰いだ。




「俺にはもう無理なんだ、どう足掻いたって先生越えることは」

『……』

「だから和…お前の師を背負っちゃくれねーか」

『!!!!!』




あたしが…師匠を背負う……?
そんなこと…。

無理だよ、あたしは。師匠の足元にすら届いてないんだから。




「お前ならできんだろ」

『…その根拠は?』

「言ったら面白くねーからな」

『………』




それってないってことですか?




「…俺の唯一の弟子だ。出来ねーわけねーんだよ」

『師…匠………』




あーあ、また泣いちゃった。

最近泣いてばっかだなぁ。阿伏兎に謝らないと。
迷惑かけただろう夜兎高のみんなにも。




「強くなれる、お前は。強い心の持ち主になれ。そしたら何かを守るためにお前の力を使え。それ以外には使うな。な?」

『はい……!!』

「…己の信念を守るために力を振るう」

『仲間を護るために…信念を貫く……』




あたしが昔そう決めた。師匠の話を聞きながら。
師匠はこれを褒めてくれたから…これだけは捨てちゃだめだ。




「ちゃんと覚えてんじゃねーか」

『自分で決めたことだから』

「そうだな」




この後、どうでもいいような話をした。時間が許す限り。




『それじゃあ…さようなら、師匠』

「じゃーな」







強くなれる

( そんな気がした )

( 己の信念を守るために力を振るう )
( 仲間を護るために信念を貫く )



◎2011




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