ひびの入った
▼25.強くなれる
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とりあえず、今の学校生活について話した。
すごく驚いてた。それでも「楽しそうだな」とかって言ってくれたのは、やっぱり師匠だから。
この人じゃなかったらもっと落胆される。
「そんで?」
『そん…で?』
「言ってねーの?昔のこととか、色々」
『あー…』
言おうとしたんですって話をした。
本当だったら、今頃話してるはずだった。
壊れて、狂って、痛みなんて感じないくらいに可笑しくなって…。そうなってから言いたかった。
なのにあたしは傷ついた。
「それじゃ意味ないだろ」
『え?』
はぁっと呆れたように師匠はため息をついた。
あたしは呆れらるた人っぽい。
「なんのために言うんだよ」
『もう…大好きなみんなに隠し事したくないから』
「壊れた状態なら…お前のその意志も曲がってんだろ」
『……』
知ってます師匠。あたしはズルい奴なんです。
隠し事したくないから言うと決めた。でも言ったら多分あたしが傷つく。
なら、あたしが傷つかない道を進もう。って。
神威はあたしのことを強いなんて言うけど、全然そんなんじゃない。それは神威だけじゃないけど。
強いって理由でもみんながあたしの傍に居てくれるのが嬉しくて…。
でもやっぱりあたしはズルい。
本当は強くなんかないのに。
「どうすんだ?」
『……明日学校行きます』
「うし、上出来だ」
ガシガシと頭を撫でられた。
女の子なんだから、ボサボサになっちゃうぐらい言ってもいいんだろうけど、嬉しいから言わない。
師匠に撫でられるのが嬉しくてしょうがないんだ。昔と同じように。
「…和、安心しろ」
『え?』
「俺も先生なんざ背負えねー」
『…師匠にも……そういう人がいるんですか?』
「あぁ、死んじまったけどな」
『……』
また、空を仰いだ。
「俺にはもう無理なんだ、どう足掻いたって先生越えることは」
『……』
「だから和…お前の師を背負っちゃくれねーか」
『!!!!!』
あたしが…師匠を背負う……?
そんなこと…。
無理だよ、あたしは。師匠の足元にすら届いてないんだから。
「お前ならできんだろ」
『…その根拠は?』
「言ったら面白くねーからな」
『………』
それってないってことですか?
「…俺の唯一の弟子だ。出来ねーわけねーんだよ」
『師…匠………』
あーあ、また泣いちゃった。
最近泣いてばっかだなぁ。阿伏兎に謝らないと。
迷惑かけただろう夜兎高のみんなにも。
「強くなれる、お前は。強い心の持ち主になれ。そしたら何かを守るためにお前の力を使え。それ以外には使うな。な?」
『はい……!!』
「…己の信念を守るために力を振るう」
『仲間を護るために…信念を貫く……』
あたしが昔そう決めた。師匠の話を聞きながら。
師匠はこれを褒めてくれたから…これだけは捨てちゃだめだ。
「ちゃんと覚えてんじゃねーか」
『自分で決めたことだから』
「そうだな」
この後、どうでもいいような話をした。時間が許す限り。
『それじゃあ…さようなら、師匠』
「じゃーな」
強くなれる
( そんな気がした )
( 己の信念を守るために力を振るう )
( 仲間を護るために信念を貫く )
◎2011
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