ひびの入った
▼23.銀色のそれ
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しばらくベンチに座ってた。
師匠が来るような気がして。まぁ…来ないか。
『(…電話)』
携帯がぶるってる。どうせ阿伏兎だろうなぁ…は?
私の目が可笑しくなければ画面に映ってる文字…神威なんですけど。
意味わかんない。
2週間も返事してないような女だよ?ほっといてもいいのに。
《「和?」》
『………』
《「黙っててもいいよ、俺が一方的に喋るから」》
『!!!』
なにその喋れないの前提みたいな言い方(実際そうだけど)。なんかムカついた。
声なんて…
意地でもだしてやる。
こう考えてる間にも神威の声が右から左。聞く気なんて全くない。
私にあるのは喋る気だけだよ。
今までだって喋ろうとしたの1回だけ。もう喋れるのに喋ってなかっただけかもしんない。
大きく息を吸った。
『…神威』
《「和…?」》
『もう喋れる。今まで喋らなかっただけだから』
《「…じゃあ返事も聞けるわけだ」》
返事?ごめんなさい。返事ってなんの返事?
全く話聞いてませんでした、ごめんね神威。
でも…声出せてなんか吹っ切れた。
運は私を見捨ててないみたいだから。今まで悲観的だったのが馬鹿みたいに思える。
人生なんだもん…みんな平等に決まってる。
《「はぁ…告白の返事だよ」》
『あ…』
《「返事は?」》
言って…いいんだよね?
『好き…です。神威のことが』
《「うん」》
…素っ気なくない?うんって…?
……まぁいいや。神威はよく判らないから。これでいいのかも。
『それじゃあ…ちゃんと帰るから』
返事も聞かずに携帯ぶち切りした。もう大丈夫だから。
あとは、師匠に会うだけ。
ここで粘ってやる。絶対会うんだから。
『…よし、』
素振りでもして待とう。どうせなら。
そっちのが気付いてもらえる可能性だって高いんだから。
と、銀色の何かが遠くで動いた。
『(もしかして…!)』
銀色のそれ
( 阿伏兎ー… )
( なんだよ )
( …好きって言われたんだよ…ね…… )
( どんだけ不安なんだよ )
◎20111106
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