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ひびの入った

23.銀色のそれ

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しばらくベンチに座ってた。
師匠が来るような気がして。まぁ…来ないか。




『(…電話)』




携帯がぶるってる。どうせ阿伏兎だろうなぁ…は?
私の目が可笑しくなければ画面に映ってる文字…神威なんですけど。

意味わかんない。
2週間も返事してないような女だよ?ほっといてもいいのに。




《「和?」》

『………』

《「黙っててもいいよ、俺が一方的に喋るから」》

『!!!』




なにその喋れないの前提みたいな言い方(実際そうだけど)。なんかムカついた。
声なんて…
意地でもだしてやる。

こう考えてる間にも神威の声が右から左。聞く気なんて全くない。
私にあるのは喋る気だけだよ。

今までだって喋ろうとしたの1回だけ。もう喋れるのに喋ってなかっただけかもしんない。


大きく息を吸った。




『…神威』

《「和…?」》

『もう喋れる。今まで喋らなかっただけだから』

《「…じゃあ返事も聞けるわけだ」》




返事?ごめんなさい。返事ってなんの返事?
全く話聞いてませんでした、ごめんね神威。

でも…声出せてなんか吹っ切れた。
運は私を見捨ててないみたいだから。今まで悲観的だったのが馬鹿みたいに思える。
人生なんだもん…みんな平等に決まってる。




《「はぁ…告白の返事だよ」》

『あ…』

《「返事は?」》




言って…いいんだよね?




『好き…です。神威のことが』

《「うん」》




…素っ気なくない?うんって…?
……まぁいいや。神威はよく判らないから。これでいいのかも。




『それじゃあ…ちゃんと帰るから』




返事も聞かずに携帯ぶち切りした。もう大丈夫だから。

あとは、師匠に会うだけ。
ここで粘ってやる。絶対会うんだから。




『…よし、』




素振りでもして待とう。どうせなら。
そっちのが気付いてもらえる可能性だって高いんだから。


と、銀色の何かが遠くで動いた。




『(もしかして…!)』









銀色のそれ

( 阿伏兎ー… )
( なんだよ )
( …好きって言われたんだよ…ね…… )
( どんだけ不安なんだよ )




◎20111106




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