ひびの入った
▼22.ざまぁみろ
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制服に着替えて、家を飛び出してた。
木刀も持って。
あたしに剣道を教えてくれた…師匠に会いたい。
もちろん空手を教えてくれた先生にも感謝してる。
でもその人は空手しか教えてくれなかった。
『(何処…だろ…。)』
ずっと昔住んでた地域。
かなり変わってる。
あたしが住んでた家は他の誰かの物になってた。
…そりゃあそうだよね。
お母さんたちも…
嫌な思い出のある家を離れたい。
その嫌な思い出を作ったのは紛れもなくあたし。
色々文句言えるような、そんな立場じゃない。
『(あ…)』
公園あった…!!
剣道を教えてもらった公園…。
昔は空き地同然だったのに今じゃこんなに遊具があるんだ。ちょっとだけ、悲しい気もするけど。
「君1人?」
『!!!』
「学校抜け出してきちゃった感じ?」
「そうに決まってんじゃん。制服来てんだから」
そういう自分たちも十分制服来てんじゃん。
あたし抜け出してなんかないし。
「俺たちと楽しいことしない?」
「どうせ暇でしょ、学校サボってんだから」
「なんか言えよ」
それが言えないんですけど。
え、どうしよう逃げるべき?でもこの人たち諦める相手に見える?
あたしには見えない。
…暴力していいですか?
いやでもなぁ…公共施設なんだよ此処。それが問題。
…弱い相手は殺気だけでも恐れる。
殺気も判らない奴は相手にするべきではない。
いつだか自分でそう言ってたんだっけ。
誰かにそう言われたんだっけ。
覚えてない…けど…。やってみる…か。
「!!!」
1人、殺気くらいは判るらしい。他はずっとニヤついてる。
でも1人判ればそれで十分。
「コイツ…ヤバイぞ」
「は?」
「何言って…」
物分かり悪いよこの人たち。
ついでに、意識はされてなかったと思う、校章のバッジを指差した。
夜兎工業…だよ?
「!…こいつもしかして夜兎の奴らを入学早々1日で倒したっていう…」
「渚…!?」
「黒髪のポニーテールに木刀…」
「一致してんじゃねーか」
「この前3Zの高杉を負かしたんだろ?」
「適うわけねぇ!逃げんぞ」
奴らは一目散に走ってった。
『(ざまぁ)』
…あたしだいぶ荒れてる。ざまぁなんて…。こんな小さいことで思わなかったのに。
寧ろ鴻山和、ざまぁみろ。
お前は弱い。
運もない。
だって…師匠に会いにきたのに。
銀魂高校かな、さっきの人たち。
高杉のこと言ってたしね。
…ざまぁみろ鴻山和。
自分が判ってない。あたしの知名度ってそんなにあったんだ。
ざまぁみろ
( 何してんだろあたし )
( …阿伏兎。何怖い顔してんの )
( 渚嬢が…消えた… )
( !? )
◎2011
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