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ひびの入った

21.塩分強め

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あれから数日。



学校は2週間くらい休んで(病んでたし)、声は一度も出てない。



あたしがこの2週間で成長したのはちょっとだけ打つのが速くなったこと。
あ、携帯ね。




「…渚、今日は学校行かねーか」




首を振る。



こんな弱い自分見せたくない。
いや、見せる為に壊れたのに…。



想像以上にあたしは弱かった。




「なんでもいいが…幼馴染みだからってお前さんの下僕じゃないことくれぇ覚えとけ」




これはしょうがないし頷いた。



阿伏兎は下僕じゃなくて大事な幼馴染み。
そんなこと、判ってるつもりだったのに…。



あたしは弱い。
それだって、本当は判ってたはずなのに。



気付いたときにはもう全部遅いんだ。
手遅れなんて言葉はあるけど、大事なことは全部手遅れ。
手遅れが当たり前で、そうじゃないのが奇跡。



あたしはいつも手遅れ。
奇跡的に間に合ったなんてことは…1度もない。



神威のことだって…ルックス良いし絶対モテるもん。
今更神威が好きだなんて言ったって…。



もう手遅れ。



あたしに奇跡なんて訪れない。
あるのは喪失感だけ。



何かを得ると同時にいつも喪失感を得る。



壊れようと決意して自分というイメージが崩れ去った喪失感。
告白に舞い上がって、でもそれも喪失するくらい時間は経った。
本気を出したときの…何も覚えてないあの喪失感。



どれをとっても喪失感しかない。



こんなとき…あの人はどうするんだろう。
弟子は師匠を抜くくらいじゃないといけないのに、まだまだ遠く感じる。



また…会いたいのに。









塩分強めの水滴


(それはそっと頬を濡らした)




◎20111026




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