ひびの入った
▼21.塩分強め
21/37
あれから数日。
学校は2週間くらい休んで(病んでたし)、声は一度も出てない。
あたしがこの2週間で成長したのはちょっとだけ打つのが速くなったこと。
あ、携帯ね。
「…渚、今日は学校行かねーか」
首を振る。
こんな弱い自分見せたくない。
いや、見せる為に壊れたのに…。
想像以上にあたしは弱かった。
「なんでもいいが…幼馴染みだからってお前さんの下僕じゃないことくれぇ覚えとけ」
これはしょうがないし頷いた。
阿伏兎は下僕じゃなくて大事な幼馴染み。
そんなこと、判ってるつもりだったのに…。
あたしは弱い。
それだって、本当は判ってたはずなのに。
気付いたときにはもう全部遅いんだ。
手遅れなんて言葉はあるけど、大事なことは全部手遅れ。
手遅れが当たり前で、そうじゃないのが奇跡。
あたしはいつも手遅れ。
奇跡的に間に合ったなんてことは…1度もない。
神威のことだって…ルックス良いし絶対モテるもん。
今更神威が好きだなんて言ったって…。
もう手遅れ。
あたしに奇跡なんて訪れない。
あるのは喪失感だけ。
何かを得ると同時にいつも喪失感を得る。
壊れようと決意して自分というイメージが崩れ去った喪失感。
告白に舞い上がって、でもそれも喪失するくらい時間は経った。
本気を出したときの…何も覚えてないあの喪失感。
どれをとっても喪失感しかない。
こんなとき…あの人はどうするんだろう。
弟子は師匠を抜くくらいじゃないといけないのに、まだまだ遠く感じる。
また…会いたいのに。
塩分強めの水滴
(それはそっと頬を濡らした)
◎20111026
←◎→