ひびの入った | ナノ

ひびの入った

16.顔面飛び蹴り

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高杉が来た。
なのに和は現れない。



皆探してるけど…この前みたいに歌うほど機嫌良くないと思うんだよね。




「あ、阿伏兎。和は?」


「もうすぐ来るさ。その前に高杉と話さねーとなぁ…」


「?」




言いながら阿伏兎は高杉の方に歩いてく。
阿伏兎じゃご不満らしい高杉は、あからさまに不機嫌。



そろばんのくせに和を指名とは生意気だね。




「なんだ?渚はどうした」


「…今ちょっと病んでてなぁ…まぁもうすぐ来んだろ。
覚悟しとけよ?アイツの1番の本気で来る」




そう言って阿伏兎は戻ってきた。
高杉は放置でいいんだ。




「1番の本気って?」


「あー…今までで1回しかやってねーやつだ」


「それを…高杉に?」




少し、ずるい。
それじゃあ高杉が特別みたいじゃないか。



俺とは今まで本気でも戦ってくれてないのに。




「お前さん、渚嬢のことになるとえらく拗ねんだな。
安心しろ。アイツは仲間には手出ししない奴だ」




仲間…ね。
手を出されてない俺は仲間。



嬉しいんだか嬉しくないんだか。



やっぱり可笑しい。
喧嘩してくれないのに喜んでるなんて。



和のことになると拗ねる?
それは違う。
ただ強い女と戦いたいだけだ。



じゃあやっぱり…なんでこんなに嬉しいんだろう。




「阿伏兎さん!!屋上から渚嬢が飛び降りました!」


「着地できたかは確認できません…」


「目撃情報ですが、無事着地できたようです!」




どこの団体だよ?
阿伏兎も阿伏兎で「うむ、ご苦労」とか言って…。



それより屋上から飛び降りたって和が?
あの細い体じゃ骨折は免れない。



っ!?



強烈な殺気を感じた。
俺に向けられたものじゃないけど。




『三つ編み、邪魔、飛ぶ』


「え?」




凄く長く感じた。



言った直後、和は俺を飛び越えた。
いくら小さくったって170あるよ、俺。



びっくりして少ししゃがんだかもしれないけど。



そのまま和は走って行って…。




「よぉ、なぎ」









顔面飛び蹴り


(……………)
(見て、阿伏兎。あのそろばん絶句だよ)
(顔に靴型ついてんな)




◎110918




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