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ひびの入った

10.本当の強さを見てない

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『ねぇ阿伏兎』


「どうした渚嬢?」




和と阿伏兎が耳打ちを始めた。



阿伏兎の分際で生意気なことをする。
今日は俺の希望で海に来たんだろ?




『んー…制服じゃないと嫌だな、気分が』


「あんのかよ!?」


『いえす』


「海でか…」


『うん、そういうことで神威、着替えてくる』




…どういうことで?



そういうことが何か俺は知らない。
阿伏兎に教えてもらうのは気に食わない。
けど…知らないままの方が気分悪い。




「阿伏兎、どういうこと?」


「…あそこ見ろ」




言われた通りの方向を見ると男の集団がいた。
見覚えがある。



あれは…。




「春雨の連中だ。尾行でもしてたのかぁ?
渚嬢には散々負けてんだ。諦める気にはならないもんかねぇ」


「……思い出したよ、渚のこと。俺春雨高校にいたからね」




マジかよくらいの反応はあると思ってたんだけどな。
阿伏兎は何も言わなかった。



少しは気、遣ってくれてるのかもね。



…──渚。
春雨高校の宿敵とされ、詳細は関わった人しか知らない。



性別、学校、年齢…。
全てが謎。
あるのは渚というあだ名と、圧倒的な強さ。
春雨の奴らがボコボコになって帰ってきたから相当。



それが…渚?




『おまたせー、2人とも。じゃ、早速行ってくるよ。
とりあえず喧嘩したくないから口で押してみるけど…』




とか言いながら1人で和は行った。



春雨相手で口喧嘩が通用するわけないのに。
でもこれは見物だね。



俺はまだ









本当の強さを見ていない

(俺と和の喧嘩じゃ…まだ本気出してないよね)
(…あの程度だったら俺ぁこんな苦労してねぇよ)




◎110731




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