小説
5年くのたま / 変態臭 / 企画 / ×収集癖

風邪をひきました。熱はないけど、鼻水と喉がマズイ事になっている。同室のくのたまにはあからさまに煙たがられる。辛い。果てには部屋から追い出される始末で、鼻水を啜りつつ、頭巾を口元に巻きつけて、仕方なく薬だけでも貰おうかと保健室に向かうことにした。



「先輩が風邪だなんて、珍しいですね。はい、風邪薬とお水です。でも、先に食事してからにしてくださいね。食堂のおばちゃんにうどん作ってもらってきましたから」
「おお、ありがとう三反田くん。至れり尽くせりで私もう死んでもいいわ」

それに比べうちのくのたま連中は何なんだ。風邪っぴきをこの寒空の下に放り出すなんて酷い。私の周りのくのたま性格どぎつい奴多すぎる。

三反田くんが持ってきてくれたうどんをふーふーしながら啜った。ああ温まる。心まで温まる気がする。もうこのまま寝たい。誰か、おふとん持ってきて。

そういえば、と何故か一緒にうどんを食べていた三反田くんが(小腹でも空いてたのかな)箸を止めた。

「ついでに、この間の切り傷のところ、包帯だけ替えておきましょうか」
「そういえば換えに来い言われてたわ。行く気なかったから忘れてた」
「ダメですよ、化膿してないかチェックしなくちゃ」
「鶴町くんが念入りに舐め散らかしたから大丈夫だと思うけど、よろしくお願いします」

私もお椀を下に置き、袖を捲り上げて、腕を三反田くんの方へ突き出す。優しくスルスルと包帯が解かれていく。三反田くんの治療は動作こそ遅いけど、その分丁寧だ。少なくとも痛くないだけありがたい。

「うん、大丈夫そうですね。良かった」
「あまりの優しさに油断してたけど、君、今解いた包帯懐にしまいこんだよね」
「……」
「返しなさい」
「嫌です!これは僕の物です!」
「いやわがまま言わないの、返しなさい!」
「嫌です!やめてください!」

私は風邪のせいで息があがる身体に鞭を打つようにして、三反田くんに掴みかかった。そういえばまだ薬飲んでないや。

「やめてください誰か!!!」
「あっこらっ誤解生むような声あげんな!!」

スッと障子戸が擦れる音がした。

「数馬ぁ指切ったーって…うわあああああああ!?」
「作兵衛!助けて!!」
「何この空気」
「はぁはぁしてる先輩と着物がはだけてる数馬…だと…」
「いやいや何でもないからね富松さんホント勘弁してください!!」

事案発生不可避。

150201
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