小説
変態臭 / 痛い / 企画 / ×傷口フェチ

また怪我をしました。友人の手元が狂った手裏剣が私の二の腕をスパッとしやがりました。かすっただけなので、出血の割には傷口はあんまり深くはなさそうだ。井戸で洗い流すと血はもう止まっていた。これなら善法寺さん対策は大丈夫。ただ…



「あっ、ナマエせんぱいだぁ」
「つ、鶴町くんじゃない…ど、どうして1人なのかな?」
「伊作せんぱいならすぐに戻ってきますよぉ?」
「一番あかんヤツや…」
「ナマエせんぱい、お怪我です?」
「いや、違うのでご心配なく」
「みーっけ!」
「ぎゃああああああああ!!??」

小さい両手が私の腕を捉えた。まるで今からとうもろこしを食べるような掴み方である。その両手の間には私の切り傷が。その捕食のたとえは間違っていないどころか的確っていうのが恐ろしい。彼の言葉を借りるならすごいスリル、である。

「傷は舐めて治すんですよ〜」
「うんそれは応急処置って言ってね?保健室ではあまり行われない行為かなぁー?いだだだだだ」
「スリルぅ」
「百歩譲って舐めて治すとしても、舌先硬くして傷口をぐりぐり抉りまくるのは間違ってるよ?誰に習った」
「伊作せんぱいです」

ですよねだって君たちとってもよく似ているもの。血を舐めるだけの善法寺さんに比べて、傷口抉ってくる分このちっちゃい善法寺さんの方が余計に性質が悪い。舌で傷口を広げられたせいで、来たときよりも悪化した。すぐ戻ってくると言っていた善法寺さんは、血が完全に舐めとられた私の傷口を見てとても残念がっていた。血を見なければ普通の善法寺さんに絆創膏ではなく包帯を巻いてもらった。

「あ、そうだ。ナマエちゃん、君にはそろそろ伝えておかなければならないことがあるんだ」
「えっ…な、何ですか改まって」
「君は左近をいたく気に入っていたよね?」
「君らと違って、彼は不器用で手当は手荒いし憎まれ口を叩くけれど、いつも熱心に治療をしてくれるからね。もちろん三反田くんと猪名寺くんの人を労わる優しい手当も好きよ」
「実は左近のその手厳しさはわざとだから」
「…はい?」
「彼は人が痛がる顔が何よりも好きなんだ。力が付いたら関節を自分好みに折り返したいと言っていたよ」
「!?」
「ちなみに数馬は使用済みの包帯収集が趣味だし、乱太郎は傷口の様子をじっくり観察しては絵に表し事細かに記録するのが使命だと思っている」
「嘘…だろ…」
「全て本当のスリル〜、ナマエせんぱい現実を見ましょ?」

川西くん私の腕を触りながらいつもそんなことを思ってたのか…そして今私の腕に巻かれている包帯は三反田くんのコレクションの一部になるのかそうか…。

あれ、でも待てよ?

「猪名寺くんのは割と普通…というかむしろいいことなんじゃない?」
「この前、乱太郎には傷口の味を聞かれました〜〜」
「」
「僕も鼻血の味を…あと数馬の使用済み包帯の経過も根掘り葉掘り聞いてたね。左近の逆関節計画には誰よりも興味を示していた…」
「ファッ!?」

全部網羅してる、だと…。何そのハイスペック主人公超怖い、何より無自覚っぽいのがすこぶる怖いなんて末恐ろしい…。ここは新しい自分でも見つける場所か何かかな?保健室とは一体何だったのか。
130720
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