小説
(マルコ視点)

最近の流れから、大体の見当はついている。不自然に真顔な彼女が僕に接近している理由が。確実にめくりにきている。僕は道を譲るように端へ寄るが、その真意は背後を守るためだ。

「どうぞ」

彼女にとっては遊びだろうけれど、異性に無意味に触れるのは良くない。彼女は不意打ちを得意としているようだから、真っ向からやんわりと受け流せばとりあえず諦めるだろう……と思いきや予想の斜め上だったなんか真っ向から攻めてきたんだけどどういうことだ。

「…あの」
「尻を明け渡せ」
「いやちょっと意味が分からないというか恥を知れよ?」
「やんわり言われた」

ダンッと両手を壁に付いて見上げてくる。上目遣いなのに全く可愛いと思えないのは、彼女の目が完全に獲物を狩る目をしているからだろうか。目を逸らしたらめくられる、そんな気がする。じりじりと間合いを詰めてくるせいで身体が当たりそうになるが、そうなってしまっては本末転倒だ。近い部屋に避難しようと少しずつ横に身体をずらす、間合いを詰めるという攻防戦の末、あと少しでたどり着く…というところで、よく知る人物の声が聞こえた。

「おいおい何やってんだよ…!こんな真昼間から!」
「ジャ、ジャンッ!?」
「もらった!!」

――ペロンッ

「!?」
「成し遂げたぜ」
「お前らそういう関係だったのか…!?」
「ジャン誤解だから。いつものアレだから」
「だ、だよな!まぁさすがにコイツはないよなー…」
「マルコって意外と良い身体してるんだねびっくりしちゃった」
「ファッ!?」
「いやいや適当もいいとこだよ」
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