…。どう都合よく好意的に解釈しようとしても、あっちの本棚の影に隠れている彼女が何か良からぬことを企んでいる以外に考えられない。何なんだあの悪そうな顔は…全く意味が分からない。僕は気が付かなかったフリをして、手に取った本を開いた。ああ言うのは、構うからいけないんだ。無視しておけば、きっとそのうち諦めるだろう。
甘かった。
彼女がさっきまでいた辺りをチラッと確認し、彼女がいなくなっているのを見て安堵しているところをやられた。
――ペロンッ
「!?」
「アルミンのめくったった〜〜」
成し遂げて満足したのか、彼女はそのままぴゅーと走って図書室を出て行ったが、僕はただただ茫然とするしかなかった。次元が違いすぎてもう何がしたいのか意味が分からない。僕は、いつの間にか硬く握り締めていた本をソっと棚に戻し、たくし上げられた腰巻を再びズリ下げて元の位置に戻す。結論としては、だ。……何もなかったことにしよう。
131010