小説
高2くらい

俺のベッドで横になりながらゲームをしているナマエ。ナマエも俺と同じあの夏の選ばれし子どもの一人である。それ以来ずっと続いている長い付き合いだ。
遊びに来るなり、さも当然のようにベッドを陣取るコイツだが、別に付き合っているだとかの甘い関係ではなく、ただ小学生の頃の延長でズルズルと男女の境目が曖昧は状況に落ち着いてしまった、それだけの関係だ。
きっとコイツは他の選ばれし子ども達にも俺と同じように接して、そしてアイツらを俺と同じように困らせるのだろう。

「ナマエ、あのさぁ」
「んー?」

ギシリとベッドのスプリングが軋む。大き目にと買ったはずのベッドは、今の俺にはちょうど良くなっていた。寝転ぶナマエの上に覆い被さると、さすがのナマエも驚いたようだ。

「俺も男なんだけど」

びっくりしたように目を見開いたナマエだったが、それはほんの一瞬のことで、途端に目を細めて笑い出した。心の内を隠すような、謎めいた笑顔は昔から変わらない。この顔だ。俺をおかしな気持ちにさせるのは。

「うん知ってるよ?」
「…だったら、そういうのやめたら?」

ベッドで寝転んだり、無防備な格好したり。見ているこっちは気が気じゃないのだ。

「太一は安全だから。絶対にそーいうことにはならない」
「…何でそう思うんだ?」
「何年の付き合いだと思ってんの。太一は人一倍仲間思いで、かなり理性的だよ」

コイツはよく分かっている。けれど、それじゃあ俺の立場がない。ぐいっと顔を近づける。鼻がぶつかるくらいの、お互いの息遣いを感じる距離。

「それが嘘だったら?」

それが、俺の精一杯の反抗。なのに、お前は一瞬でぶち壊す。見つめ合ったまま、ナマエは笑顔のまま、俺に言うんだ。俺の唇にナマエの吐息がかかってそわそわする。

「ううん。嘘じゃないよ」

ナマエを俺の目の前から顔をずらして、俺の頬にキスをする。

「私、見る目だけは確かだから」



負けた。



「……はぁ」

格好つかねーなぁと溜息を吐いて、ボフッとナマエの隣に寝転ぶ。2人で寝るにはこのベッドは少し狭い。ナマエはさっきの笑い方とは打って変わって、太陽のような明るい顔で笑った。つられて俺も笑ってしまう。いつまで経ってもコイツには敵わない。

「でも、太一」
「何だよ」
「彼女は作らないでね」
「……へいへい」

これからもこんな生殺しのような関係が続くのか。そう思うと気が滅入る反面、つまりこれから先もずっと隣にはナマエがいるのだと思うと、たとえ生殺しだとしても満更じゃないと思う自分がいて、俺はつくづくコイツに惚れ込んでいるんだなぁと痛感した。

130214
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