小説

僕は彼女を聖母のような女性であったと記憶していた。僕や悟天君に分け隔てなく一途に注がれる愛情、対して生まれたのは、彼女を姉のように慕う思いと、それ以上の幼く拙い恋心。それが錯覚などではない確かな感情だと言い切ることもできた。ただその想いが成就するどころか彼女に伝える前に、彼女はここを離れどこか遠くに行ってしまったのである。この世界のまだ子供の僕が彼女をどう思っているかは知らないが、僕の事だから彼女に何度でも恋しているに違いない。本題は違えど母さんがタイムマシンを発明したことで、僕は再び彼女に会うことが許されたのである!!

期待しすぎた。上げに上げて落とされたもうきっと立ち直れない。名前は明かせないから遠くから眺めるだけ、あわよくば少しお話でもと後半ちょっと欲を出したのが敗因である。


「いくつ?」
「はっ、はっ、二十歳でしゅ…!」


噛んだ。


「ア〜〜せめてあと5歳若ければね、残念だわ〜〜」
「え」


相も変わらずお美しい僕の初恋の人は、そのキレイな顔を少しだけ歪ませて僕を見ていた。


「守備範囲15歳までなのよ。気持ちは嬉しいのだけれどごめんね。誰だか知らないけど…」

110329
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