小説

化けの皮という言葉がある。人の皮を被せてできあがるアンドロイドにおあつらえ向きの言葉だと思う。彼女はアンドロイドの化けの皮を剥がすことがいたく好きで、ふと思い出したように皮膚を消すよう要求してくる。アンドロイドが皮膚を消してその素地を晒すという行為に、何か特別な意味があるわけではないが、異なる種族である彼女と生きようとしている僕に対して、あまりにもデリカシーがないのではないか。彼女は人であるのにアンドロイドよりもデリカシーがないらしい。

「真っ白でキレイ」

皮膚はもちろん、髪も眉も、爪やヘソすらもない身体に触れながら、彼女はそんな風に言う。溶接されたプラスチック同士の継ぎ目を指先でなぞりながら彼女は笑う。何がおかしいのか微塵も理解できないが、人ならばきっと、この行為をくすぐったいと言って一緒に笑うのだろう。思いつきで口角を引き上げてみたけれど、

ああ、まだ僕はうまく笑えそうにない。







素直な彼が好き。真っ白でキレイな身体の彼が好き。人間のふりをして、ぎこちない笑顔を浮かべる彼が好き。アンドロイドと人間との間で苦悩している彼が好き。彼は異なる種族であることを少なからず気にしてくれているようだけど、私は人間が嫌いだからちょうど良い。たまに人間の真似がすぎて、人間にしか見えないときがあるから、私は彼の化けの皮を剥がして確かめる。確かめて安心する。

ああ、まだ彼は作り物だと。

181217
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