小説
夢主≠GS4主 / GS4主は小波美奈子固定

「「「風真玲太に幻滅されたい!!??」」」
「ちょっと声おっきいから!」

手芸部の活動中、小波美奈子より風真玲太関連の相談を持ち掛けられたのだが、内容が内容だったので友人A〜Cである我々は驚きに任せて大声をあげてしまった。こっそりと耳打ちするようにしてした小波には悪いことをしたと思う、近くに座っていた我々どころか部員全員にとどろいてしまったかもしれない。
その証拠に皆思い思いの作品を製作中のはずなのに誰もが手を止めていた。「うへへ何でもないよ〜〜ん」と曖昧な笑顔を振りまくと周りはとりあえず納得したように作業を再開してくれた。我々は我々で声を絞り細心の注意を払いながら会話を続ける。

「それで、小波は何でまた風真玲太に幻滅されたいので?」
「……玲太くん、女子への理想が高くて」

小波の話を要約すると、“風真玲太の女子に対する理想がことさら高いこと”、“自分がその期待に応える自信がなく息がつまること”、“彼のことは好きだけどできればもう少しハードルを下げてもらいたいこと”。大体要点はそんなところ。途中から小波の声は自信なさげに震えていたのだけど、おそらく要望の根底にある「幻滅されたいけど嫌われたくはない……」という思いがあきらか矛盾していることに話しながら気が付いたためだろう。
そういう小波を「可愛い奴め」と思うのだけど、こんな意を決したように相談を持ち掛ける彼女を茶化す気も、ましては否定する気も起きないのでとりあえず最後まで話を聞いた。吐き出すだけで軽くなる気持ちもあるにちがいない。

「ちなみに花椿ツインズは何て言ってたの?」
「うん……相談したんだけどマリィならもっと素敵な女の子になれるよ!って……」

花椿ツインズには既に相談している前提で聞いてみると、察しの通り2人には相談済みだったようだ。当時言われたままに答えてくれたようで、その様子がありありと目に浮かぶ。我々友人A〜Cのうち、1人は額に手を当て「あちゃ〜〜」と言い、また1人は苦笑いを、もう1人は「解釈一致」と力強く頷いていた。最後の1人は「花椿ツインズはそうでないとね!?」と前のめり気味に続けたが今はそういう話がしたいわけではない。

「コイツじゃないけど確かにあの2人ならそう言うよね」
「ハードルは下げるものじゃなく飛び越えるものだし?小波、もう少し頑張ってみる?」
「む、むり〜〜〜!限度あるってばーーー!」
「だよねえ、じゃあ現実的な落としどころを一緒に考えるか。幻滅される方法、ね」





部活時間終了ギリギリまで風真玲太に幻滅される方法についての作戦会議をひとしきり行った後、小波はお礼と未完成の文化祭用ドレスを残し、風真玲太のお迎えと共に帰って行った。帰宅準備をしながら3人の間だけで何となくしていた会話もとい作戦会議の延長戦にて、とある一説が浮上した。1人の「あのさ?私、小波がいる前では言えなかったんだけど」という言葉を皮切りに、また1人が「奇遇だね?私もある、言いたかったこと」と言う。ただしもう1人は「えー?なになに?」と特に何も考えていない。
1人が「小波がほんの少し強気に出れば風真玲太など一捻りなのではなかろうか」と、また1人が「風真玲太を調教することなど造作もないのではなかろうか」と言った。2人の意見を受けたもう1人は「たしかに!?」と手を叩いた。したがって当一説は概ね満場一致だったのだが、内容が内容なので小波の耳に入ることはなかった。

220623
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