小説
微裏 / 女主攻め / 続く?

柳の部屋で何だかすごいものを見つけてしまった。それは到底健全とは言えない代物で、柳がどういった思惑で用意したのかは知れないけれど、何となく長く使い込まれている感じがした。心の奥底で嫉妬めいた感情が芽生える気配がする。

柳は人間関係においては不器用であっても、決して不誠実ではない。だからこれはきっと過去の残骸なのだろうと思う。柳と、私の知らない誰かとの間にだけ存在する思い出の残骸。
せめて私の目に触れないくらいの深いところに沈めておいてくれれば良かったのに。少なくとも今は私がいるのに、いつでも手を伸ばせる位置に過去の気配を残しておくなんて残酷なことをする。

いっそ見なかったことにしようかと考えあぐねてみたものの、私自身がこんな感情をお腹に溜め込んだままではいられないと思った。柳と付き合っていく上ではお互いつまびらかであることがスタンダードで、嘘も隠し事も余計なものだから。

だから直球に柳に問うことにしたのだ。この箱の中身は何ですかと。対して、柳は無意味に唇を動かしながら口ごもる。どんな言葉が飛び出すのだろう、そんな風に考えながら彼が口を開くのを待っていると、柳のつとめて平静、平静ぶった声が響いた。

「これは……じ、自分用なんだ……」

何だって?????顔を赤くして弁明する様子は真に迫っていて、ああ、本当にそうなのだろうと思わせるだけの説得力があった。それに、相手はあの柳だからか自分用にそういったモノを所有しても不思議ではない気さえする。

「そうなんだ……」
「ひ、引いただろう?」
「ううん、それは平気」

自分でも驚くべきことに、過去の女用と言われるよりか幾分もマシだと感じていた。

「ふぅん……そっかあ」
「……ナマエ?」
「じゃあ、これはどうやって使うの?」

ただ柳の発言が私の感情の動きを見越したものである可能性もないとも言えないわけで。敏い柳は私の中に残るわずかな疑いの色を見逃さなかった。本当にごくわずか、柳がもう一押ししてくれたら心の底から信じることができると思うのだけど。

「……ナマエ、お前は誤解をしている」
「誤解?」
「これは真実、自分用で。あえて弁解するがナマエを傷つけないために吐いた嘘ではない」

柳が狼狽えている。妙に饒舌になって、さきほど顔を赤くして弁明していた時とは違い、別の意味で必死だ。言葉を尽くしてくれるのは嬉しい。でも今は行動で示す番だ。有無を言わさず、適当に取り出した柳の、ああ、伏せるのももう面倒だ、彼の自称自分用のアダルトグッズを1つ差し出す。
よりによってこれか、と遠い目をする柳を前に首を傾げる。おかしいな?一番シンプルな物を選んだつもりなんだけど。

210214
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