小説
年齢操作(大人) / 年の差

この少女に在りし日を偲ぶ。11歳を迎えた頃には、ことさら鮮明に昔の記憶をほじくり返されている感じがする。
俺と貞治の幼馴染であった貴女は俺ではなく貞治を選んだ。そのことに嫉妬するほど浅慮ではなかったし、心から祝福できるくらいには折り合いもついていたので、2人が結婚した際にも子を成した後にも、特に軋轢もなく幼馴染という関係を続けられている。
貞治と貴女でなければ、きっとこうはいかなかったに違いない。俺は未だに独身で、貴女への想いを諦めきれない未練がましい男だなんてレッテルを貼られてもおかしくなかったから。

(とはいえ、2人は俺のことを信用しすぎではないか…?)

だから平気で自分たちの娘と俺を2人きりにする。幼馴染2人に心から信用されている、その点については誇らしく思うし、無論その信用に報いたいとも思う。しかしそれは俺自身の主張にすぎないのだ。
この少女は俺と2人きりになると化けの皮が剥がれ出す。ただ無邪気に膝や背に乗っていた頃とは違う、身近にいる手頃な大人相手に恋愛ごっこをしているわけでもない、少女の目には確かな劣情が宿っていてそれは年々強くなっていく。どこに両親の友人の恋慕する子どもがいると思うだろうか。

「蓮二さん、すき」

恋慕される側になると思うだろうか。年端も行かぬ少女に欲情するような趣味はないので、せがまれる唇を手のひらで避けながらどうしたものかと考える。答えはまだ見つかっていない。

200825
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