小説
微裏 / 女主攻め / 成長

くのたまは概ね性格だとか性癖だとか色々なものが歪んでいる。昔から僕にちょっかいをかけてくるミョウジも例に漏れず歪んでいる。謂れのない嫌がらせを受けていると思い込んでいたけれど、それがミョウジの好意の示し方であると気付いたのはかなり後になってからだった。

低学年の頃の僕らを知っている人は似た者同士だと言う。確かに僕の方は自分の感情に素直になれないことがあるし、ミョウジはミョウジで一見自分の感情に素直になれず方向性の間違った愛情表現をしているようにしか見えないから。
しかし、ミョウジは僕とは違う、心からソレが正しい愛情表現であると信じて疑っていない。ミョウジを知れば知るほどわかる、彼女が如何に純然なのかということが。だから。どんなに歪んでいても普通でなくても間違った形であっても、ミョウジの好意は僕に突き刺さる。同情も含んでいるのかもしれなかった。

「今日は背中ね」

僕の返事を聞く前に手慣れた手つきで腰紐を抜き取る。ミョウジがやりやすいようにと僕はいつからかタンクトップではなく腹掛を選ぶようになっていた。

「…んっ、」
「川西の背中、私好き。白くてすべすべでキレイだから」

ミョウジが僕の襟首を掴んで上着を剥いだ、両肩から背中にかけて肌が晒される。露出した背中をつつつとなぞられて、その指がうなじや背骨の部分にある結び目に引っかかるたび心臓が跳ねる。ミョウジの指が嬉しそうに結び目を弄るのでミョウジのために腹掛にしているのだととっくにバレているのかもしれない。
僕の緊張感など歯牙にもかけずミョウジは僕の肌に唇を落とす。ぢうと吸われて僕の生白い背中が鬱血してゆく感触がした。植え付けられている、いくつもいくつも。

「っぁ…!」
「花の絵が沁み込んだみたい」

じんじんと背中が熱い。その熱から逃れるために身を丸めようとすると、両肩を掴まれて逆に背筋を逸らされてしまいその拍子に浮き出た肩甲骨をガリと噛まれた。僕の背中はもうズタズタだ。でも半身の創痍はミョウジの歪で純然な好意の証明。だから。

「あ。川西勃ちゃった?」
「…っそれは!」

彼女の指先が肌を耕して花と称した鬱血のあとは熱を伴って根付いてゆく。そして種を落とすのだ。僕はその取り除き方を知らない。

200724
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